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第十六回 わらいのトーテム

わらいのトーテム
わらいのトーテム

この作品は4年生が、題材「ラブ&ピースのトーテム・ポール」で表したものです。様々な木材を積んだり組み合わせたりして、表したいことを見付け、立体に表す活動です。

 

8月末、夏休みが明けて授業が始まりましたが、学校の教育活動はさらに制限が厳しくなりました。共用で使うものを控えることや、できるだけ個人のスペースでの活動を確保することが求められたのです。

私は、制限が続く子どもたちの気持ちを和らげたいと思いました。

そこで、自分や友だち、家族を見守るトーテム・ポールというテーマで、角材や木っ端などの材料を組み合わせ、自分にとってのいいと感じる形を4時間で立ち上げることを提案しました。

 

  

弾むような身体のリズムで

 

 最初にKさんは、材料コーナーから太くて大きめの角材を選びました。しばらくの間、ずらしたり、組み替えたりして何度も崩しては積んでいきます。「まず、とにかく高くしよう」と思ったようです。

 弾むような身体のリズムで、材料コーナーへ何度も往復していました。「ずらすことで面白い形ができる」と言うKさんは、1本目の柱が倒れそうで倒れないバランスを考えた積み方で立ち上げていきました。

 

 次に、その横に2本目の柱を積み上げていきますが、「高さを変えた方が面白い」と感じたようで、高低差をつけて表します。Kさんは、「低くすることで、最初に表した柱が、もっと高く感じた。」と言います。

 

 さらに、2本の柱を細い棒でつなげると、その上にも曲芸師のように太い棒を積んでいきます。息をこらすように慎重に接着していきました。「スリルを楽しんだ」とKさんはつぶやきます。

 

  

 

静かな響き合い

 

 Kさんは、Aさん(女児)、Nさん(男児)、Yさん(女児)と同じ机で一緒に活動しています。やりたいことも表し方も異なる4人から、とても静かな響き合いを感じるのです。

 

 私は4人の活動の姿を見守ることにしました。Yさんが絵の具と歯ブラシに付けた絵の具を作品に吹きかけると、斜め前のAさん、隣のNさんもその表し方を取り入れています。Kさんは「あ、『絵の具で ゆめもよう』 (日本文教出版 図画工作3・4下 P.8-9)でやっていた方法だね。ぼくのやり方でやってみよう」と言い、筆に付けた絵の具を振り落としています。

 

 また、Yさんが「これでえがくと」(日本文教出版 図画工作3・4下 p.40-41)で使った布切れを持っていて、それを使っていました。KさんはYさんに布を分けてもらい、作品に貼り付けました。「これは、お知らせ看板です」(作品左の英語が書かれた白い布)と教えてくれました。

 

 この4人は、それぞれが夢中になって活動している中で、友だちの活動にアンテナを張っています。友だちの活動を取り入れながら、自分のやりたいことが編み直されていきました。

 

 私は、子どもたちの静かな響き合いの中で営まれていることを、少しでも多く見とっていきたいと思いました。

 

 

 

「わらいのトーテム」 

 

Kさんは、作品に「わらいのトーテム」というタイトルを付け、以下のように話してくれました。

 

この作品は、見る人に笑いをとどけるトーテム・ポールです。笑顔や笑いの力が、自分たちや世界の人たちをなごませるように、いろいろな笑顔をかきました。一番上の顔は、どーんと、見守っている笑いの神です。

 


材料:木材ブロック(様々なサイズにカットしたもの)、間伐材切り落とし、小枝、シナベニヤ切り落とし、木工用接着剤、絵の具等

わらいのトーテム 4年生Kさん
わらいのトーテム 4年生Kさん

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コメント: 4
  • #1

    神谷真帆 (日曜日, 03 10月 2021 10:42)

    活動が制限され、今まで当たり前のように出来ていたことが出来なくなっていく今。大人でもキツイ状況の中で子供たちはこちらが思っている以上に沢山我慢し、心が疲弊していると思います。
    その中で「子供たちの気持ちを和らげる題材」を展開することに感動しました。常に子供の気持ちに寄り添う陽子先生の優しさが伝わってきます。

    題材を受け取った子供たちがその想いから発想を広げ、世界中の人に笑いを届けることをテーマにした「わらいのトーテム」。それは同時に、自分たちも笑顔で過ごしたいという願いが込められているように感じます。

    そんな子供たちの思いを汲み取り、この状況でも笑顔を絶やさず自分の世界を作っていけるような、題材の手渡し方を考えていきたいと思いました。
    ブログの更新、ありがとうございました。

  • #2

    はな (日曜日, 03 10月 2021 17:07)

    素敵なトーテムポールですね。昔、自分の通っていた学校には卒業記念で作成された大きなトーテムポールがあったように記憶しています。その迫力に劣らないパワーと笑顔をくれる作品です。同じ机での違った個性が重なり響き合っている様子を見てみたいです。

  • #3

    図工のみかた編集部 (金曜日, 29 10月 2021 21:03)

    神谷真帆先生

    お世話になっております。コメントへの返信が遅れてしまい申し訳ございません。

    「子どもたちの気持ちを和らげる題材」をいうようなものを「息抜き」ではなく、学習活動として適切なタイミングで入れられるのは、図画工作しかないかもしれませんね。

    >同時に、自分たちも笑顔で過ごしたいという願いが込められている
    きっとそうなのでしょうね。自分の今の気持ちをそのまま表出することが許されている教科というのもそう多くはないように思います。

    神谷先生のお話を拝見しまして、図画工作が子どもたちの気持ちを如何に大切にしながら学習活動を行っているのかを感じました。
    先生の子どもたちも、きっと手渡された題材をと手も大切なものとして受け取っていると思いますよ。

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • #4

    図工のみかた編集部 (金曜日, 29 10月 2021 21:06)

    はなさん

    コメントありがとうございます。返信が遅れまして申し訳ございませんでした。

    確かに昔の学校ってトーテムポールありましたね。30年以上前ですが私の学校にもありました。
    この「笑いのトーテム」は60cm程度で、実はさほど大きな作品ではないのですが、おっしゃるようにパワーをくれるからか、大きく感じますね。

    同じ教室の中で、静かに響き合う子どもたちが、それぞれの表現をどのように見つけていったのか。私も興味があります!