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第二十三回 新しい子どもたちをむかえる木々

5年生の「絵の具スケッチ」(日本文教出版 図画工作5・6上 p.8-9)を基にした題材です。

身近にある、よいと感じた場所やものをもとに、小さな紙に絵の具で表すものです。

 

 

自分の色

 

 新緑の美しい頃、5年生最初の図工の題材は「絵の具スケッチ」です。小さな紙と絵の具セットを持って、身近な場所やもののよさを味わいながら、表したいものを考える活動です。

今回も最初に、図工室で「黄・青・白・赤・黒」の5色だけで、自分が4月だなあと感じる木々の色(「自分の色」)をたくさんつくってから表すことを提案しました。自然の色のよさや美しさをより感じ取ってほしいと考えたからです。

 私は子どもたちを側に集め、黄色と青色の絵の具で、ほんの少しずつ筆先に絵の具を付け、混ぜて色が変化する様子を演示しました。すると、「ぼく、筆先でそんなに細かく調整できるかな……」と、Nさんの小さなつぶやきが聞こえました。私は、ハッとしました。子どもが私の演示をそのように見ていることに気づかされたからです。そして「そう、筆先で色を調整していくということをよく見ていてくれました。ぜひ、ためしてみてください」と伝えました。


 

 

よいと感じるもの 

 

 Fさんは、無言で自分の色をつくり始めます。時々窓の外をじっと見ては、パレットの色を確かめるようにしながら、あっという間にたくさんの色をつくりました。

 Fさんは、図工室の中央に置かれた紙(教師が、板目紙をいろいろなサイズにやぶいて準備しておいたもの)の中から、小さめの紙を選び、テラスに出ていきました。桜吹雪の舞う中で、2本の桜をじっと見つめています。幹や枝の色を少しずつ重ね、その上から筆でポンポンとたたくようにして花を表していきます。

 自分のかいた紙を少し離して見ていると、友だちに「Fさんの作品、いいね」と言われ、嬉しそうでした。その後も、Fさんは小さめの四角の紙、とりわけ、やぶけたざらざらな部分が多い紙を選んでいます。理由を尋ねると、Fさんは「1枚の紙に木を組み合わせてかきたかった。細長い紙だと1本しか入らない」「ざらざらな部分が多い紙の方が、額縁のようで木が浮かび上がった感じがするから」と話してくれました。

 小さな紙にどんどん絵の具で表したものが図工室の机に並んでいくと、自然に友だちの作品を見て回りながら、また紙を選び、自分がよいと感じるものを外へ探しに出かけていきます。Fさんは、Rさんの作品をじっと見ています。「Rさんの木の形と色のバランスがいい」と感じたFさんは、自分もバランスを考えようと次から次へと木をスケッチしていきます。

 最後に、Fさんは大きい紙を2枚とり、校舎と面白いと感じる木々を表して筆を置きました。そして、一番初めに表した桜を囲むようにして、木々の絵を台紙に並べました。

 

 

「新しい子どもたちをむかえる木々」

 

Fさんは、完成した作品に「新しい子どもたちをむかえる木々」というタイトルをつけました。以下、Fさんが作品に寄せたコメントです。

 

外でスケッチするのは、ああ、いいなあと感じる。

校庭では、4年生が新しい担任の先生とにぎやかに体育をしている。

去年まで私たちの担任の先生だった。

私たちの新しい担任の先生も面白いし、わくわくしている。

 

「五本木の森」の木々が、優しく感じる。

風にゆれている。光も当たって、黄緑色がやわらかい。

たくさんの木をスケッチして集めたら、自分だけの森ができた。

 


材料・用具

児童:水彩絵の具

教師:板目紙(小さめのサイズに切っておく。)、台紙(白ボール紙)

台紙50×50㎝ 5年生 Fさん
台紙50×50㎝ 5年生 Fさん

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コメント: 1
  • #1

    hana (木曜日, 12 5月 2022 17:16)

    F張り出されています板目紙を破くと断面の色が違うのですね。たしかに額縁のようだというFさんのイメージがよくわかります。学校の入り口に他の作品も張り出されていますが、どれも素敵で見とれていました。まさか5色で描かれていたとは!Fさんが作品に添えた言葉は、詩ですね。「黄緑色がやわらかい」とは、なんて素敵な言葉なんでしょう。作品からも、詩からもFさんが感じた光や風、Fさんのやさしい感性を感じ取ることができます。