この作品は、2年生の子どもが題材「木のいいかたち」の授業で表した作品です。角材を切り、積んだり重ねたりして、自分にとってのいい形をさがしながら、思い付いたことを立体に表す活動です。
「ギコギコいい音ひびかせて」
最初に、子どもたちはのこぎりを使い、万力やCクランプで挟んだ角材を切っていきます。刃物の安全指導をしっかり行います。90cm程の長さの角材を、どんどん切っていきます。
本校区では放課後の学童クラブ等で、のこぎりを使って木工作を行うことが多いようです。経験があっても、のこぎりは2年生にとって十分すぎる手応えがあります。初めのうちはたどたどしい動きですが、何度か切っていくうちにいい音が響き渡るようになります。スムーズに切れるようになったら、少しずつ長さを調整したり、わずかに角度をつけたりして切ることを楽しみます。2時間で、あっという間に一人が20個以上の角材を切り終え、子どもたちはそれを並べたり積んだりして、遊び始めます。
「木のいいかたち」
次の週は、自分で切った角材を積み木のようにして、積んでいきます。Kさんは角材を積んではくずし、何度もためしていい形を探しています。切った角材は少し角度がついているので、微妙に斜めになり、倒れそうで倒れない面白いバランスの形が生まれてくることをKさんは楽しんでいるようでした。手を放しても落ちてこないことを確認してから、ひとつずつしっかりと接着をしていきます。
横に張り出し立ち上がったKさんの形に惹きつけられた私は、作品を回して見ながら角材が薄くなっている部分があることに気付きました。切り落とす直前に角材が剥がれて薄い部分が付いて切れたのです。それを面白いと感じて自分のいい形に生かしていたのでした。
その後、Kさんは絵の具で真っ白にぬり、一番上に黄色をのせました。今どんな感じがしているか尋ねると「お城!」と教えてくれました。黄色は王冠だそうです。
しばらくしてまたKさんのところに戻ってくると、真っ白だったお城は赤色にぬりかえられ、〒マークをかき、作品を完成させました。
「だれでもポスト」
作品には「だれでもポスト」とタイトルがつけられました。
Kさんは作品について以下のように話してくれました。
はじめは、おしろにしようと思い白でぬりました。
ほかの友だちが見て面白いと思うものにしようと、白の上を真っ赤にぬって、ゆうびんきょくにしました。
でもはじめにかんがえたこともわすれないようにのこしておきたくて、
黄色の王かんと白いとうだけ赤でぬりませんでした。
「だれでも」というのは、木がいろんな方に向いているので思い付きました。
サンタクロースでも動物でも、植物でもすきなところにおくることができます。
ほとんどの人は気付かないでしょうが、このいちばん下にボタンがあります。
たとえばタンポポのわた毛はばらばらになって、飛んでいくけど、
このボタンをおしてわた毛が土台にすわると、
駅のホームでも、電車のすきまでも飛んでいけて、もとのなかまに会えます。
作品をつくりながら、いろんなお話がそうぞうできてたのしいです。
材料・用具
児童:木工用接着剤
教師:角材(小割、半ヌキそれぞれ90cm程に切っておく)、土台となるラワンベニヤ(15cm)、共用の絵の具、のこぎり、万力、Cクランプ 等
《だれでもポスト》 25×20×35cm 2年生 Kさん
コメントをお書きください
さとう (火曜日, 05 11月 2024 09:51)
小学校2年生で、こんなに作者の思いのあふれた作品が作れるんだな、と驚きました。
作品の趣旨が途中で変わったこと、でも変えずに残したこと、それらの思考の過程が面白いですし、
小さな小さなボタンのこだわりも、大変すてきだなと思いました。
図工のみかた編集部 (火曜日, 05 11月 2024 11:42)
さとう様
コメントありがとうございます。
>小学校2年生で、こんなに作者の思いのあふれた作品が作れるんだな
本当にそうですね。2年生だからこそ、そして自分が愛着をもってつくったからこそ、素敵なお話が想像/創造できるのかな、と思って読んでおりました。
「形や色などと豊かに関わる」というのは、まさにこうした物語生成にあらわれているのかもしれませんね。
Kさんの「このボタンをおしてわた毛が土台にすわると、駅のホームでも、電車のすきまでも飛んでいけて、もとのなかまに会えます。」というところに、とてもいとおしさを感じましたw
引き続きよろしくお願いいたします。