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第五十六回 なぞの建造物

この作品は、6年生の子どもが「ぬくもりの明かり」の授業で表した作品です。教科書の「紙から生まれるすてきな明かり」(日本文教出版 図画工作5・6上 p.52-53)を参考にしています。


 

 

「これまでの経験を生かす」

 

 子どもたちは、「光」を使った活動が大すきです。図工の授業では、自然光やLEDを光源にしたものなど様々な題材で「光」を感じ取る活動を行ってきました。6年生には、これまでの「光」の経験を生かし、自然の材料を使って、家に飾りたいぬくもりを感じる明かりをつくることを提案しました。

自然の材料には、そのものがもつ温かさやぬくもりがあります。光と組み合わせて、よさや美しさを探る活動にしたいと考えました。


 

 

「無心で」

 

さっそくHさんは材料コーナーで板切れや角材などを選び、どんなことができるか試しています。しばらくして、それらの材料を全て元に戻しました。そして、マッチ棒をひとつかみ持っていくと、机の上で、八角形のように少しずつ積み始めました。指先を巧みに動かしています。とても小さな材料ですが、挑んでいるという感じがHさんの眼差しや姿から伝わってきます。声をかけられないくらいHさんは集中していています。1時間ほど無言でマッチ棒を積み続けていくと、八角形を保ちながら、一気に20cmを超える高さに積みました。

 

ここで図工室の遮光カーテンを閉め、照明を消すと「わあ!」、「きれい!」と子どもたちから歓声が上がりました。

しかし、さんは点灯せず、暗い中で無心で積み続けています。Hさんが、今どのような感じがしているか尋ねてみると、「塔のようにしたい」と話してくれました

 

さんは塔の上の方を細くしようと考え、マッチ棒の数を少しずつ減らしながら6角形、5角形と狭めていきました。

ここまでつくりあげると、さんは明かりを点灯させました。ほっとした表情です。最後に、明かりの土台をつくり始めています。曲線で切った板に、紙バンドを細く割いて木や草のような形をいくつかつくり、板面に載せました。小さな木や草が、作品をより高く大きく感じさせています。さんは最後に、明かりの根元が安定して立つように、キューブを回りに付けて完成させました。

 

 

「なぞの建造物」

  

Hさんの作品のタイトルは「なぞの建造物」です。Hさんは活動や作品について以下のように話してくれました。

 初めは塔にしようとどんどん高くしたいと思いました。同じ材料を使っている友だちより高くしたいと無心で棒を積みました。右手に接着剤、左手に棒を持ち、できるだけ手を素早く動かしました。

 作っている時、友だちに「巨大なサボテンみたい」と言われました。自分では、塔のしゅっとした鋭い感じを出そうと思ったけれど、棒を積んでいくうちに、少しずつ形が変わっていきました。最初のイメージから変わったけれど、

 作品を持ち上げて見ると、軽いけれど、とてもどっしりとした感じがしました。

 家のベランダで育てている植物の中に置いたらいい感じだと思います。

 



材料・用具

教師:集成材、切り落としの板、角材、小枝、ラミン棒(角柱・平)、紙バンド、マッチ棒、キュープ上の角材、木の実、スタッフ(麻の繊維)、麻布、和紙、画用紙、木工用接着剤、電動糸のこぎり機 など

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