この作品は、6年生の子どもが「感じて 考えて」教科書(日本文教出版 図画工作5・6下 p.52-53)の授業で表した作品です。
様々な材料や用具を使い、自分の表したいことを見付け、形や色、構成の美しさの感じなどを考えながら、思いに合わせて工夫して絵に表す活動です。
「からだや心をいっぱい働かせて」
6年生は、間もなく卒業です。これまでの経験を生かし、いろいろためしながら感じたこと、想像したことを大切にして、自分の表したいことを見付けて絵に表していくことを子どもたちに提案しました。体全体の感覚を働かせ、納得のいくまでつくり、つくりかえていけるよう、堅ろう性のあるキャンバスを基底材にしました。
真っ白なキャンバスを手にしたほとんどの子どもが、まだ何を表すか決まっていません。からだや心をいっぱい働かせて自分の表したいことを構想していくこの題材を、もう何年も子どもと共に編み直し続けています。
「さがす みつける つくりだす」
Aさんは、水彩絵の具を使い、パレットで赤や白などの色を混ぜています。自分の丸筆で水をふくませ、透き通るような色の美しさを感じながら画面の一番上にぬり始めました。少しずつ色味の異なる赤をつくり、丁寧に重ねたり、ぼかしたりしています。半分ほどぬっていくと、今度は上から青を少しずつキャンバスの上で重ねて、濃淡を付けながら下半分は真っ青にぬりました。どんな感じがしているか尋ねると、Aさんは「海・・・かな」と静かに話してくれました。
隣の友だちは、立ったまま、キャンバスに絵の具のチューブから直接出した青色を、ポンポンと指で繰り返したたいています。身体を弾ませ、指で絵の具をつける心地よさを楽しんでいます。さらに色を足しては混ざっていく青色の画面をさがし続け、「私って、すごいかも!」と小さな声でつぶやきました。
対面の友だちは大好きな黄色を、10cm幅の太い刷毛で黙々とぬることに浸っています。それぞれに子どもたちが活動を展開している姿に触れる時、私はとても嬉しくなります。
次の週、Aさんは前時に表したキャンバスの画面をじっと見つめています。画面の色や形に誘われるかのように、ペインティングナイフで木工用接着剤を盛り上げるようにして付け、そこにガラスカレット(シーグラスを細かくしたもの)を散りばめました。その後、液体粘土、貝殻、小石、水引、木のビーズなど、色をどうしようか、どう置こうか考えて、黙々と表し続けました。Aさんの表す過程では、静けさの中にもうねるような動きを私は感じました。
最後にパステルの白で赤色の光のような形の周りをぬって、指でぼかすと、「あっ、てらされている感じ!」と小さくつぶやいたように覚えています。私も画面がぱっと明るくなったように感じました。Aさんは、ここで作品を完成させました。
「夕日がてらす海」
Aさんは作品に「夕日がてらす海」というタイトルを付けました。Aさんは活動や作品について以下のように話してくれました。
最初にキャンバスを見て、「海」をかきたいと思いました。どんな海をかくか決まっていませんでした。
自分の絵の具で少しずつ赤色をぬりながら、きれいな色だなと思いました。
夕日にしようかなと思い、いろんな材料をどう使おうか考えました。
茨城で見たきれいな海、冬の青森で見た美しい海、心の中にある海。
図工をしている時は、とても楽しい気持ちになります。
つくっている時に、海の気持ち、花の気持ち、いろんな気持ちを想像することができます。
図工をしていると、時間を忘れていろんなことを考えたり、想像したりすることができます。
材料・用具
教師:アクリル絵の具、パステル、液体粘土、シーグラス、ビーズ、貝殻、石、土、木工用接着剤、キャンバス(F12号)、刷毛(2cm、3.2cm、5cm、10cm)、ペインティングナイフ 等
児童:水彩絵の具 等
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