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第四回 データの海

 この作品は、4年生の「絵の具でゆめもよう」(日本文教出版 図画工作3・4下 p.8-9)の授業の中で表したものです。絵の具のいろいろな使い方をためして、できたもようの紙を使って絵に表すものです。

 

 

いろいろためす

 

 K君は正方形の紙を選び、線をかきだしました。折れては分かれ、交差し、広がっていく細かい線です。緑色だけでかいてみる。次は色を組み合わせた線。かいた線の外側を黒でぬってみる。放射状に広がる線や同心円の線。色や紙の大きさを変えて生まれるいろいろな円の形。様々な線をかき続けた後、紙を真っ黒にぬりつぶして緑色のしぶきを飛ばし、K君は2時間で一気に20枚近くを表しました。

 私は途中で「いろいろな用具も使ってみる?」と声をかけることができませんでした。筆1本で夢中になって線をかいているK君に、いろいろな用具は今必要ないと思ったからです。

 

 

どんな感じ?

 

 子どもたちが多様な試みをしている時、「何を感じているのかな。どんなイメージが広がりつつあるのかな」と、子どもの姿や生まれてくる形や色から想像を膨らませ、こっそり教えてもらうことを私は何より楽しみにしています。

 K君は「線は送りたいメッセージが伝わっていく感じがする」「丸い形の中の線は、エネルギーのコアの感じ」と話してくれました。このあとにつくりだすK君の新しい世界を早く見たくなりました。

 

 

「データの海」

 

 翌週。かいた中から7枚を選び、K君は大きい画用紙の上に並べ、何度か置き変えて見た後、そこから太い線を広げていきます。7枚の紙が全て線でつながって完成かと思いましたが、厚紙を持って来て、はさみで切ったり、折り曲げたりしています。細長い厚紙を上だけ貼り、動かせるようにしています。「このレバーを引くと、(黒く塗りつぶして緑の絵の具のしぶきをかけた紙の)ぱっとはじける感じがあらわれて、データが一気に通っていく感じがするんだ」。その下の折り曲げた紙の上につけた同心円のもようは「ここがスイッチで、押すとたくさんのデータの動きを調整できる」と話してくれました。

 

 タイトルは「データの海」です。どうしてそのように考えたのか尋ねると、「直線の形は、しーんとしている波だけど、その中で生き物たちが動いている感じ。海は、データが大海原のようにあふれている感じを表しているから。」「このタイトルは小さな紙を組み合わせた時には決めた」と私の想像を越えた言葉が返ってきました。

 

「テーマは自分で自由に決めたい」といつも言っているK君をとても頼もしく思います。

 


 

※その後K君が「これでえがいたら」でえがいた「未来のパソコン」

データの海 4年生 Kさん
データの海 4年生 Kさん

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コメント: 8
  • #1

    奥村高明 (木曜日, 01 10月 2020 13:26)

    「子供(クライアント)」に何かしらの事実や思考など(ファクト)があって、「教師(カウンセラー)」が、それを把握して声をかけると、多くの人がそう思っています。でも、カウンセリングでも今そのような解釈はとっていなくて、クライアントとカウンセリングの両方そろって、問題(ファクト)が生まれ、その後に解決(ファクト)が生まれると考えられています。どちらも共同的な実践者なのです。だから「声をかけない」というのも、教師と子供がつくりだす事実(ファクト)で、声をかけないからこそ子供に能力が培われる。また、教師が声をかけた瞬間に、子供に物語(ファクト)が生まれ、自分の考えやイメージがしっかりと成立する。指導案上は、事実→指導になるけど、現場では少し違っていて、事実と指導が同時に生まれています。そのことがつたわる原稿で、とても勉強になりました!

  • #2

    図工のみかた編集部 (金曜日, 02 10月 2020 10:51)

    奥村高明先生

    コメントありがとうございます。

    指導案は文字での1次元、2次元的なものですが、実際の授業はもっと立体的で、子どもと先生がともにつくり上げるということですね!
    まさしく「ともにかなでる図工室」の名の通りだと感じ、うれしく思いました。

    引き続きよろしくお願いいたします!

  • #3

    松本恭子 (日曜日, 04 10月 2020 08:50)

    へぇ〜!K君が!�
    と、何だか楽しく観させていただきました!
    先生の「イメージをこっそり教えてもらう」様子が目に浮かびます。
    子ども達も、非言語の図工だけでなく、(つじつまが合わなくても)こんな風に少し言葉にすることでまたイメージを加速させているのかもしれないなと、ふと感じます。
    K君の作品、ワクワクしますね!

  • #4

    hana (日曜日, 04 10月 2020 22:23)

    2時間で20枚近くの紙に書く集中力、4年生になるとできるんですね。イメージがあふれ出てきたのでしょうか。そして次の時間にはその中から7枚を選び出す。どんな風に考えて選んだのでしょうね。平面から最後には、立体までつながっていった作品は、のびやかさを感じます。先生の個を認めて、さりげなくサポートする声かけの結果だと思います。K君、これからも楽しみです。

  • #5

    太田優子 (火曜日, 06 10月 2020 18:38)

    1本の筆で、集中して描くK君の姿がとても想像できました。折れ曲がった線から、いくつものパターンを自ら生み出す挑戦意欲、そして、それらから想像した題名の発想力に驚かされました。
    線や色にも子どもなりに様々なイメージを持っているのだなと実感させられました。
    K君の今後の作品もたのしみです!

  • #6

    図工のみかた編集部 (水曜日, 07 10月 2020 08:44)

    松本恭子様

    コメントありがとうございます。

    きっと言葉にすることで、自分がやってきたことを振り返り、意味づけ(価値づけ)しているんでしょうね。
    そこを大々的にではなく「こっそり」聞く、というのも大事なところなのかもしれません。きっと聞くことで鈴木先生ご自身も新しく意味や価値をつくりだしているのではないでしょうか。
    本当にワクワクする作品ですよね!

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • #7

    図工のみかた編集部 (水曜日, 07 10月 2020 08:49)

    hana様

    コメントありがとうございます。

    紙の大きさや、絵の具のかきごごちなどもあって、どんどんかけていけたのかもしれませんね。数がすべてではないですが、そうしていろいろと試す様子が生まれると嬉しいですよね。今回選ばれたなかったものも見てみたくなりますよね。

    きっと先生が単に「受け止める」だけでなく、子どもときちんと向き合って互いに影響を与え合う状況になっているからこそ、こうした作品が生まれたのかな、と思います。
    K君が今後どのような世界を生み出していくのか、本当に楽しみですね!

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • #8

    図工のみかた編集部 (水曜日, 07 10月 2020 08:55)

    太田優子様

    コメントありがとうございます。

    細かく折れた線をかいているので、おっしゃる通り本当に集中してかいたのかなと思います。息をとめながらぐっとかいたのでしょうか…。
    形や色からイメージしたのか、最初から「データ」をイメージして形や色をえらんだのか今となっては本人も分からないかもしえませんが(おそらくその両方なんでしょうが…)、タイトルも本当に素敵ですよね。

    その子の好きなこと、大切に思っていることがにじみ出てくるのは面白いですね。今後の作品も気になりますねぇ。

    引き続きよろしくお願いいたします。