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第三十一回 森のあたたかな ぬくもり

この作品は、5年生の題材「森のいのちのおくりもの」の授業の中で表したものです。自然の材料を使って立体に表す活動です。


 

 

林業体験から

 

 5年生は八ヶ岳の自然宿泊体験教室で、林業体験をします。子どもたちは、間伐の意味や林業に携わる人の思いや願いを聞き、実際に山の急斜面で間伐を体験させてもらいます。子どもたちは山から吹き降りてくる風、木漏れ日、梢がこすれ合う音、土のにおい、樹木が倒れる音、瑞々しい樹木をのこぎりで切っている時の感触や香り、寄って来る虫の気配などを全身で感じます。年月をかけて成長した年輪に驚きながら、貴重な体験をしてきます。体験教室を終えたあと、その間伐材を図工の材料として使う授業を毎年行っています。

 子どもたちに、間伐材と自分で集めた自然の材料を組み合わせて、立体に表すことを提案しました。

 今年の間伐材は、厚みが薄かったので、子どもたちが空間を感じながら、形を立ち上げていけるように、小枝や細めの檜のラミン棒を用意しました。

 

 

自然の材料がもたらすもの

 

 子どもたちは、自然の材料を手にして小枝の「冬芽」の形を見つけたり、においをかいだりしてしばらく材料を感じています。

はじめにKさんは、持ってきた松ぼっくりやどんぐり、乾燥したハーブなどを間伐材の上にのせたり、組み合わせたりしてどんなことができるかいろいろ試みています。そして、間伐材に開けた穴(※)に、小枝やハーブを差し込みました。

 次に、Kさんは、少量の麻の繊維を両手の平でころころと転がし続けると、まん丸の球体をつくりました。さらにその中にドングリや細い木の棒を入れ、透けて見える感じを楽しんでいるようです。また、麻の繊維を束ねて輪っかにしたものを刺繍糸で結ぶなど、材料の可能性を次々と探っていきました。

 そして、Kさんは、メッシュの麻の布を手にして、ねじったり曲げたりして、きれいな曲面がつくりだせることを見付けました。その後、青、緑、生成りの麻の布を使い、自分がいいと感じる形をつくり、間伐材の周りを囲むようにして組み合わせて付けました。

 私は、自然の材料に触れているKさんの姿を見ていて、自然の色合いや肌触りなどの心地よさ、形のよさや美しさ、不思議さに惹きつけられてやまないものがあるように感じました。

 

 

 

「森のあたたかな ぬくもり」

 

 Kさんは「森のあたたかな ぬくもり」というタイトルを付けました。以下は、Kさんが作品について話してくれたことです。

 

自然の材料の形をじっと見ていると、面白いです。

松ぼっくりは、なぜこんな形になっているのかなと思いました。

初めは、材料を積んだり、組み合わせを変えたりして試すようにしていたけれど、

自然の材料の、ひとつひとつの特徴を生かしたいと思いました。

最後に麻の布で全体をくるむようにしたら、森が守られている感じがしました。

八ヶ岳の森林の中にいる時、私は自然につつまれていると感じました。

 


材料・用具

児童:八ヶ岳での間伐材、身近な自然の中で集めた木の実や小枝など、木工用接着剤、はさみ

教師:校庭の樹木選定の際に集めた枝(扱いやすいサイズにカットしておく)、

檜のラミン棒(数種類:5mm円柱、5mm×2mm、10mm円柱)、麻ひも、刺繍糸、ファイバー・リネン(麻の繊維)、メッシュ・リネン(メッシュの麻の布)、電動ドリル、電動糸のこぎり等

(※)電動ドリルは教師が扱った。

 

 

《森のあたたかな ぬくもり》(30×16×30m) 5年生 Hさん
《森のあたたかな ぬくもり》(30×16×30m) 5年生 Hさん

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コメント: 1
  • #1

    おっかー (木曜日, 08 6月 2023 15:03)

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