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第三十九回 未知の世界

この作品は4年生の「これでえがくと」(日本文教出版 図画工作3・4下 p.40-41)で表したものです。材料の形や色の感じを生かしながら、組み合わせて絵に表す活動です。

 

この題材は、いろいろな材料にさわりながら、自分の表したいことを見付けていくものです。材料の選択肢を広げる方法もありますが、今回は 材料を布にしぼり、形や色はもちろん、何より布ならではのさわり心地のよさを感じながら表すことを大切にしました。なので、できるだけ感触の異なる布を多く用意して布の選択肢を広げ、すきなものを選んで組み合わせることを楽しめるようにしました。


 

 

さわり心地を楽しむ

 

教室の中央にある布切れのコーナーには、ジュート麻や寒冷紗などの無地や生成りの布、シンプルな柄や模様のある布、色の鮮やかな厚手のフェルト布等、できるだけ感触の異なるものを用意しました。  

活動が始まると、子どもたちは布を手に取り、「ごわごわする」「さらさらだ」「つるつるしてる」「ふわふわ、気持ちいい」「すけてるよ」「つやつや光っている」など、さわり心地を比べて楽しんでいます。色と色の組み合わせを感じたり、重ねたりして、気に入った布を選んでいます。

 

Tさんは、無地の布が入った箱から感触の異なる布をさがしています。最初に選んだ布は、黒、灰、生成り等の無地のものでした。基底材の小さな正方形の板に、黒い厚手のフェルト布をはさみで小さく切って、散りばめています。次に灰色やベージュを切って並べていきました。

 

Tさんは、画面の板目の余白を大事に残しながら、表したいことを探しつつ、その時間を終えました。私は、Tさんが無彩色の布だけを使っていることに、どのような感じをもっているのか、とても興味がありました。作品を見ていると、黒を中心に、静かに形が浮遊している印象をもちました。

 

 

自分の表したいことを見つける

  

 次の週は、布の形や色の感じを生かして、さらに一回り大きな基底材に重ね、思い付いたことを絵の具で表していきます。

Tさんは、ひとまわり大きな正方形の板の上に前時に表した小さな板をのせました。その板を動かしながら、中央、コーナー、斜めにするなど置き方を色々試しています。右角に置くことに決めると、大きい板の上に、白い寒冷紗を細長く切って、縦に何本も貼っています。ここでも色味や柄のある布は選んでいません。

 その後、Tさんは、絵の具の黒を太い筆にたっぷり付け、力強く3つの円をかくと、そこから勢いのある線をぐいっとえがきました。布を切ったり組み合わせたりしている時の静かな動きとは一変して、とてもダイナミックな体の動きです。私は、前時の小さな布切れの形が浮遊している画面と、突然響き合っているように感じました。

 

 

「未知の世界」

 

 Tさんは作品に「未知の世界」というタイトルを付けました。以下はTさんの作品への思いです。

 

黒や灰色の布がきれいだったので、選びました。

それを組み合わせてみたら、自分のあまり知らない世界を感じました。

小さな板につくっているとき、布を丸く切った形を時計にしました。

大きな板にのせたとき、こんどはだいたんにかこうと思いました。

すきとおるうすい白の布を細長く縦に置いたら、いいバランスです。

そのあと気持ちのままに、黒い絵の具で線をかくと、その形が面白くて、もっと「未知」の世界が広がった感じがしました。

時が進むのが早い、「未知の世界」です。


材料・用具

児童:はさみ 等

教師:布切れ(様々な感触、色、模様)、 基底材(ラワンベニヤ30×30㎝と45×45㎝)、木工用接着剤 等

 

《未知の世界》(45×45㎝) 4生生 Tさん 
《未知の世界》(45×45㎝) 4生生 Tさん 

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コメント: 1
  • #1

    となりのばぁばちゃん(๑'ᴗ'๑) (日曜日, 24 9月 2023 22:46)

    Tさんは小学4年生とは思えない豊かな感性と個性を持ち合わせたお子様と感じます。発想が自由で大胆!素晴らしい作品です。
    将来が楽しみです。