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第四十回 星が照らした月の時計

 

この作品は6年生が「でこぼこの絵」(日本文教出版 図画工作5・6上 p.32-33)で表したものです。薄い板を切ったり重ねたりしながら、思い付いたことを絵に表す活動です。


 

 

試みる 

 

子どもたちを側に集め、実際に切って磨いた板切れを基底材の上でずらす、重ねるなど、操作して見せます。切る、並べる、重ねる、彫るなど様々な試みを繰り返しながら生まれてくる「でこぼこ」の面白さから自分の表したいことを見付けて、6時間で絵に表すことを提案しました。

 

 

子どもたちは、思いのままに板を切り始めます。切った板切れを磨くことは、子どもたちにとって心地よく感じられるのでしょう。切り口の角が丸くなるまで磨き、「すべすべだ」と磨いた後を手でなでて確かめる子、表面をさらに磨いて「木目が出てきた!」と声を上げる子など、真剣な磨きぶりです。

美しく磨かれた板切れを集めて、子どもたちは自然に並べる、重ねる、置き変えることを楽しみながら、「裏返しにしたらどうかな。」「これをもっと小さく切ろう。」「基底材を取り変えよう。」「先に基底材に色をぬろう。」など、自分のペースで試みることを楽しみ、いきつ戻りつしながら自分の表したいことを探していきます。

 

 

Kさんの表したいこと 

  

 Kさんは、緩やかな曲線で板を切ったり磨いたりすることを楽しんだ後、正方形の基底材を選びました。基底材の周りから囲むようにして、板切れを重ねて置きました。板切れを少しずつ入れ替えたり、ずらしたりしています。そのうち、画面の中央がすっと遠くへ抜けて行くように私には感じらえました。私は、Kさんに、今、どのような感じがしているか尋ねてみると、「曲線が、きれい。空のイメージかな・・」と話してくれました。

 

 次の週、Kさんは、板切れに色を塗り始めます。青や黒を板の上で少しずつ重ねるようにしています。さらに、基底材を黒で塗りました。乾いた木切れを彫刻刀の三角刀で、すっ、すっと細くシャープな線でかすかな彫り後を残しています。

 

 最後の週には、Kさんは木工用塗料に加え、水彩絵の具も使いながら、慎重に色を重ねたり、歯ブラシで霧のように吹きかけたり、刷毛でかすれさせるようにえがいたりして、色に没頭しました。

 

 Kさんは、活動の始まりに、曲線の形やそれを構成した時の美しさから、すでに「空のイメージ」を持っていました。Kさんにとって、どのような思いがこめられた「空」なのか、私は想像しながら活動を見守りました。

 

 Kさんが作品につけたタイトルを見た時、あまりにも素敵で、言葉になりませんでした。あらためてじっくり作品を見つめていくと、Kさんの作品が強く何かを問いかけてくるように感じられてなりませんでした。

 

 

 

「星が照らした 月の時計」

 

作品を完成させると、Kさんは以下のように話し、詩を書いてくれました。

 

「世界は、悲しいことが起きている。だから深い色で全体を統一しました。そこに星をたくさんかいて、希望を表しました。曲線の板は、ひとつひとつが時をきざんでいることを物語っています。」

 

 

「星が照らした 月の時計」

 

星空が

かがやく夜に

星が 何かを照らした

見れば 見るほど

何かを示している

 


材料・用具

シナベニヤ(大、30×45㎜)、 基底材(ラワンベニヤ30×30㎝と45×45㎝)、木工用接着剤、木材用塗料、絵の具、紙やすり、電動糸のこぎり、彫刻刀、押さえ板

 

《星が照らした月の時計》(45×45㎝) 6生生 Kさん 
《星が照らした月の時計》(45×45㎝) 6生生 Kさん