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Phase003:「プログラミング教育」は、優しい子を育てる

 

プログラミングって、優しくなれるかも。

 

突然ですが先生方は今日、ご飯食べましたか?

ご飯食べる時、まず何をしましたか?

 

僕はさっき、お昼にコンビニでご飯を買って温めて食べました。

人間である先生方には、空気感を含めて、僕の食事の流れをなんとなく思いうかべていただけると思います。

 

でも「プログラミング」はここが違います。

ロボットに僕と同じことをさせようと思っても、この説明では動きません。

なぜならいつ温めるのか、いつ包みを外すのか、といったことが分からないからです。

なので、もっと細かくていねいに記述してみると...

 

<><><><><><><><>

①レンジでチンする

 ↓

②ビニールの外装を破って開ける

 ↓

③透明なプラスチック蓋を開ける(あっちっち

 ↓

④割り箸割る

 ↓

⑤「いただきまーす」って言う

 ↓

⑥食べる(うまい

 ↓

⑦「ごちそうさまでした」

 ↓

⑧片付ける

<><><><><><><><>

 

 

 

となりました。

またこれだけでなく、プログラミングでは、「順番」もとても重要な要素です。

 

たとえば、指示する順番を間違って、最初に「③透明なプラスチック蓋を開ける」なんてやってしまったら、

「ええー!?まだプラスチックの蓋の周りにビニールついてるよー!!どうしよう!?」

と混乱して動けなくなってしまいます。

 

これが俗に言う「バグ」というもののひとつで、対象となるロボットにわかるように寄り添って伝えてあげる必要があります。

 

 

 

 


オンラインワークショップでは、青森の子が「ここ動かないんだけど、なんでだと思う?」と福岡の子に話しかける場面も。
オンラインワークショップでは、青森の子が「ここ動かないんだけど、なんでだと思う?」と福岡の子に話しかける場面も。

 

 でも僕は、これって、相手がマシーンであることに限らず、「わかりあえないことを理解して、わかりあおうとすること」を学ぶ、とってもいい機会な気がするんです。

 

相手がどんな人なのか考える。

 

相手の立場に立った言葉を選ぶ。今後ますますコミュニケーションやコラボレーション、共有性や関係性に価値が置かれていく時代に、とっても必要なことなんじゃないかな、なんて思います。

よく、買ってきた機械が思うように動かずに、「むきーーーーー!!」ってしちゃうこと、ありませんか?

僕もよくあります。

でもそれって、「買ってきた機械は全知全能で私の主張を全て受け入れてくれる」っていう前提に立ってしまっていることが多いんです。

 

そんなときに、その機械に「ポチ」なんて名前をつけたりして、

「よしよしわからないんだね、わかるように操作してあげるよ、しょうがないなあ」

って思って接すると、機会を使う僕側もイライラしないだろうし、また状況は違ってきますよね。

むしろやりたいことが達成された時に、機械に仲間意識が芽生えちゃったりして。

 


動かない原因が「プログラミング」の間違いかと思ってたら、ブロックが引っかかってただけ、なんてこともよくあること。君は本当にKOOVの気持ちになれるか?!
動かない原因が「プログラミング」の間違いかと思ってたら、ブロックが引っかかってただけ、なんてこともよくあること。君は本当にKOOVの気持ちになれるか?!

 

一方的に主張をぶつけるのではなく「相手にわかるように伝えてあげる感覚」を大事にする体験。

 

プログラミング教育は「なんども試して失敗して」の繰り返しが楽しくできちゃうのも特徴のひとつですね。

 

と先述しましたが、このことはここにも言えます。

 

機械は、こちらのコミュニケーションが下手だったとしても、わからないから動かなくなったり、間違った動きをするだけで、怒って噛み付いてくることはありません。

その後に、すねてしまって、こちらが正しいことを言っても言うことをきかなくなる、なんてこともありません。

 

子どもたち自身が「他者としてのマシーン」という意識を持てるように、指導者は態度や言葉で語りかけながら学習に取り組む。

このことで、同じ取り組みをしたとしても、単なる「プログラミングができるようになる教育」とはまた違った結果を期待することができそうです。

 

 

と言うことで僕は、プログラミング教育って、実は、とっても優しい子を育てるんじゃないかなって、思っているのです。

先生方は、どう思われます?

 


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Author:清水輝大(しみずてるひろ)
ソニー・グローバルエデュケーション エデュケーションエヴァンジェリスト。
複数の美術館や科学館で、学芸員として地域や学校と連携したミュージアム教育のあり方を実践研究、各自治体における教育・文化政策の提言などののち、現職。
造形教育の視点から、主体的に「よくみて」「学び」「発想する」姿勢を育むプログラミングなどを使った教材の研究開発、
教育イベント企画、教育シンポジウム・研究会・学会講演等。
2020年まで明治学院大学非常勤講師(メディア実践論)。