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Phase057:私たちはこれまで、作られた世界に生きていた 〜AIが炙り出した自然物としての人間と、いたばし創造都市宣言〜

先日、板橋区は「みんなに かけ橋 いたばし創造都市宣言」を行いました。

僕も板橋区の教育行政の一端を担い、かつこの宣言に関わる企画に従事する者として、何度も読み返しています。

すると、それはいつしか、僕がこのブログで書いてきたことを今一度問い直すような感覚になってきたので、今回はそんなお話。

 

宣言の、冒頭の一文。

 

「板橋区は、区民一人ひとりの創意を原動力とし、あたたかでやさしいつながりを創り出す創造都市であることを宣言します」

 

これは、このブログのテーマ的に捉えながら読むと、未来を見通す上で、とっても理にかなった言葉のように思うのです。

 

なお、今回の記事に書くことは、僕の勝手な解釈であり、「もちろん」板橋区の公式見解ではありませんので悪しからず!(笑) 

※「みんなに かけ橋 いたばし創造都市宣言」に関する板橋区の情報はコチラから


 

 

作られた世界だった

 

僕たちがこれまで「これこそが仕事だ」「これこそが正解だ」「これこそが幸せだ」と信じ込んできたものの多くが、実は「どこかのエラい誰かが決めた、つくられた当たり前」に過ぎなかったということが、AI時代になって、急速に露呈し始めているように思います。

確かにこれまでは、「決められた正しい手順のための仕事」こそが科学技術や経済の発展を下支えし、僕たちの生活の安全を守ってきました。

 

振り返れば、かつての僕たちは「生きるために獲物を追う」という、むき出しの自然を生きる動物でした。そこから、より効率的に、より確実に繁栄を掴み取るために、僕たちは幾重にも重なる「システム」を開発し、その上にさらなるシステムを積み上げることで、巨大な社会を築き上げてきました。

 

これまで僕たちが「仕事」と呼んできたものの多くは、実はこの複雑化したシステムを淀みなく運用するための、ある種「機械的な営み」だったのかもしれません。

そしていま、「その営み自体を、もっと究極のシステム(AI)に代替させてしまえばいい」という、長い人類史のひとつの帰結ともいえる事態に、直面しています。

 

 

AIが作る世界の限界を超える「偶然」

 

しかしここでもう一つ、僕たちが考えなければならないことがあります。

それは、AIが描き出す答えを集積した未来は、AIの構造を前提に捉えると、どこまでも「過去のデータの積み重ね」の延長線上にしかない、ということです。

つまり、AIはあなたの質問に対し、過去(既存のデータ)を美しく構成し最適化することはできても、その「学習データの外側」にあるような逸脱した「革命的な未来」を自ら創造することはできないことになっています。

他方、これまで人類の歴史を振り返ってみれば、時代を大きく動かしてきたきっかけの多くは、計算外の出来事だったのではないでしょうか。

 

私が最近仕事で触れた「理化学研究所」では、当時の板橋の研究所の近くに存在した「竹寿司」というお寿司屋さんの出前を囲むために、さまざまな人が集って、多くの議論がなされたといいます。

「たまたま隣に居合わせた誰か」とのとりとめもない対話や、意図せず何かが壊れたり、混ざったりしてしまった「身体性を伴った偶然の出来事」、理屈を超えた出会いがきっかけとなって、新しい価値(あたらしい世界)は作られてきたように思います。

このことには、いわゆる「オープンイノベーション」と言う言葉で片付けてしまうにはあまりに勿体無い「生々しさ」が多く内包されているように思います。

 

とすれば、すべてが予測可能になりつつあるAI時代において、最も大きな価値を持っていくのは、効率化されたデータの中には存在しない「僕の、私の身の回りだけで起きる、ままならない出来事」をいかに発展させていけるか、なのではないかと思っています。

 

 

八戸の「山車組」「えんぶり組」の価値観 

 

八戸えんぶり
八戸えんぶり

ここまで考えてみて、私の中でふと思い出したのが「青森県八戸市」での経験でした。

 

八戸には、「八戸三社大祭」と「八戸えんぶり」という二つの大きなお祭りが存在します。

これらは、各地域にそれぞれ「山車組」「えんぶり組」という地元有志メンバーで構成されるコミュニティーを形成しており、このコミュニティー単位での活動が基本になっています。

これらのコミュニティーが今なお、老若男女が集って生き生きと活動するエネルギーを有していることに、僕はとても驚きましたし、ここでの交流が、八戸のいたるところでの創造的取り組みに紐づいていることも知りました。

そして、この場では「効率的」「経済的」という価値観ではなく、「だれかのため」「地域のため」「かっこいいから」「そうするのがいいことだから」という、どこかやわらかさを保っている価値観で満たされ、それが結果的に八戸の街の活性につながっていっていたように思います。

 

それでも、祭りにかだる(参画する)人が減ってきていることが課題になっていて、その理由の多くは「現役世代の仕事が忙しいから」だそう。

また、日本は少子化であって、八戸のこの状況は日本全体の縮図とも捉えられるかもしれません。

その意味でも、AIが既存の業務を高速に代替していくことは、僕たちを『システムを保守するだけの労働』から解放し、人間が本来向き合うべき『ままならない他者との縁』に立ち返らせてくれる、極めて野心的な機会と言えるはずだ、と僕は信じています。

 

 

宣言にある「あたたかでやさしいつながり」は、僕にとってこれまでの経験と紐付き、「ままならない縁」のようなものを呼び込む覚悟のことだと「勝手に」理解しました。このことは、これからの未来を見通す上で極めて示唆的な宣言だなと感じています。

 

現在、この「創造都市宣言」を、板橋区に実装していくことを目的としたプロジェクトを作っています。

プロジェクトのそこかしこに、図工美術の先生方が大事に耕し、培ってこられている大事なことを見つけていただけるようにしますので、今後このブログ内で報告してまいります。

 

これからの板橋区に、ぜひご注目ください!

 

★板橋区立教育科学館の取組みは、板橋区立教育科学館のサイトhttps://www.itbs-sem.jp/でご確認いただけます。

 

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Author:清水輝大(しみずてるひろ)
1983年、北海道生まれ。
板橋区立教育科学館館長、ラーニングデザインファームUSOMUSO代表、武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所教育共創ラボ研究員。
青森県立美術館、はこだてみらい館、八戸ポータルミュージアムはっち、ソニー・グローバルエデュケーションなどを経て、現職。
図工美術教育の手法を援用し、創造的なSTEAM教育、プログラミング教育、探究学習などの実践研究を行う。