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第十五回 知らない衝撃

知らない衝撃
知らない衝撃

この作品は6年生の「心のまど」で表したものです。

「心のもよう」(日本文教出版 図画工作5・6上 p.14-15)での活動の経験を生かしています。絵の具で思いのままにかいた形や色から自分の気持ちや感情を見付けて絵に表す活動です。

 

スチレンボードにいろいろな形の窓をカッターナイフでくり抜き、かいたものを裏から貼ると、ひとつひとつが額縁の中に収まるように引き立ちます。自分の心のギャラリーのように窓の形や構成を考えて5時間で表すことを提案しました。

 

  

感じたままにかく

 

 いつものようにRさんが表している時の集中力には眼を見張るものがあります。色を混ぜる、にじませる、じっくりとぬる、色合いを感じる、さっとかすれさせる、重ねる…。生まれてくる形や色から思い付いたことを繰り返しためす、絵の具と水と筆でどれほど可能性を広げていることでしょう。

 

 絵の具に浸っている時のさんはとても心地よさそうです。「感じたままにかく、何度も消す、どんどん変わる、だからどんどんかくのがすき」と言います。あっという間に数十枚の絵に表しました。

 

 次の時間、窓をくり抜いたスチレンボードに構成していきます。

 

 Rさんは窓の後ろにおいた紙を少しずつずらしながら、クローズアップされてくる形や色に見入っています。さらにひとつひとつの形や色の気に入った部分を選んで切り、重ねたり組み合わせたりして貼りながらコラージュを始めました。「かいたものを組み合わせることで、新しいものが生まれる」とRさんは言います。だから小さな窓いっぱいに、Rさんの選んだ方法で表していきました。

 

  

 

Rさんのスケッチブック

 

実は、Rさんは6年生になってからいつもカバンの中に自分で買った小さなスケッチブックと色鉛筆を入れています。一斉に提案しているものではありません。

 図工の授業が終わるとそのスケッチブックを見せてくれます。ただ無心に色をぬり重ねたもの、きれいだなあと感じた夕方の雲、雨上がりの朝ベランダの水たまりに映った太陽、さっと色鉛筆などでかいたもの、面白いなと思って集めた様々な質感の紙などをコラージュして表したものもありました。

 

 ちょうど「心のまど」の活動を行っている時からスケッチブックを見せてくれるようになったのですが、何かつながるものを感じました。

 

 日常の中で心にとまることをかきとめる、かくという行為そのものを楽しむ、そこからRさんが見方や感じ方を広げているからです。


 

 「知らない衝撃」

 

 Rさんは、ひとつひとつの窓に「どんなことでも恐れずに突き抜けていく」「寄り添い温かくなる」「実はつながっていて不思議なもの」「今すぐやめて次のことをしたい」「ない道を進む」「そこにあるいいものを見つけ出す」などの言葉を添えてみながら、作品に「知らない衝撃」というタイトルを付けました。

 

 この作品のイメージをとつとつと話してくれました。私はタイトルそのものにも惹きつけられましたが、さらに驚かされました。Rさんが2年生の時から、図工の時間を共にしてきました。心とからだをいっぱい動かしながら、いつも眼を輝かせ、つくりだすことの喜びを味わっていることが全身から伝わってきました。また、納得がいかない時でも自分の力で解決をしていく姿を何度も見てきました。Rさんから紡ぎ出された深く考えた言葉に、大きな成長を感じたからです。

 

新しい感覚と出会い、見えていないことや自分の感じ方や見方を広げて、変わっていくイメージ。

「衝撃」には、突然の打撃、何かが飛び込んでくる、激しく受ける感動という意味がある。

絵をかくことは、私の経験(音楽、自然、本などからの衝撃)をつなげてくれる。

絵をかくことで、自分の感情、感じ方、想像は新たなものになり、知らなかった自分をみつけられる。

だから私は絵をかくことがすき。

 


材料:水彩絵の具、画用紙(様々なサイズで小さめに切っておく)、スチレンボード(3mm厚、25.7×36.2cm、両面紙張り)、セロハンテープ、カッターナイフ、カッターマット等

知らない衝撃 6年生Rさん
知らない衝撃 6年生Rさん

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コメント: 1
  • #1

    阿部 宏行 (火曜日, 07 9月 2021 10:32)

    「衝撃」には「衝撃」です。

    知らなかった自分に出会うことのできる「表現」ってすてきですね。