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第六十回 自然をめぐる旅

この作品は、6年生の子どもが、「心のまど」で表した作品です。小さな紙に、絵の具で思いのままに表し、生まれてくる形や色に、自分の気持ちを見つけて絵に表す活動です。


 

 

「気持ちを見つける」

 

「私たちは毎日の生活で、様々な人やもの、できごとなどとかかわって生きています。その中で、心を躍らせたり、時には気持ちが揺らいだりすることがありますね。思いのままに絵の具でかくことを楽しめたら、そこに生まれてくる形や色などから、きっと自分の気持ちが見つかるのではないでしょうか。」と投げかけました。

絵の具のこれまでの経験を生かせるよう、基底材となる画用紙は質感の異なる数種類を小さめのサイズに切って準備しました。また用具も自分の思いに合わせて選べるようにしました。


 

 

「絵の具に浸る」

 

さっそくKさんは、3年生の時に土で表す授業で使った厚手の和紙を選び、筆で水をしみこませています。そこに水で調整した絵の具をすっとにじませていきました。次々と同じ和紙を選び、にじませて表すことを繰り返しています。今どのような感じがしているか尋ねると、Kさんは、「厚い和紙は自分にしっくりくる。水と絵の具で調節していいなと感じるものを探している」と話してくれました。

絵の具をぬった上に金色や銀色も重ねています。うっすらと下の色が透けるように繊細なぬり方をしたり、たっぷりと金や銀を厚く塗り重ねたりと、表し方を工夫しています。Kさんは一気に十数枚の作品をかき上げました。

次の週は、スチレンボードのまどの形をカッターナイフでくり抜き、自分の絵を裏からおさめていきます。Kさんはまどの中に入った絵を見て、自分の思いがはっきりとしてくるように感じたのでしょうか。さらに切り落とした絵のかけらを他のまどにコラージュすることを楽しんでいます。そして、最後に0.7mmの細い黒のペンで、水彩絵の具の色や形を手がかりにして、形を強調させたり、木々をかいたり、人間のような形をかき加えていきました。

私は声をかけられないほどにKさんはずっと絵の具に浸り、表すことに没頭していました。

 

 

「自然をめぐる旅」

  

 Kさんのタイトルは、「自然をめぐる旅」です。完成した作品を一緒に見ながら、Kさんのひとつひとつのまどにこめられている思いを話してくれました。

夜の海の向こうに見える山は、迫力がでるように金色を厚く重ねた。

ハートの形のまどは、心臓であり、情熱も表している。

私とお父さんで星空を見ていたら、空からはしごがおりてきた夢。お父さんは望遠鏡をのぞいている。

大空に飛ぶ鳥が、私たちを見ている。

氷河の氷が切り離され、取り残された人間。シロクマと人間を重ねた。

樹の下にいる自分。いつか美しいオーロラを見てみたい。

花と蝶の下にいる小さな自分。自然の大きさを感じている。

思い出のきれいな風景。冬の夜空が美しかった。

湖を見た思い出。

いかだにのってみたい。

海に浮かんでいる自分。

海に浮かぶ満月の光。

天の川をいつか見てみたい。

自然の透き通るような水が好き。

 

気付いたら、ずっと自然を感じていた。

大切なことを見つける旅になった。

 

《自然をめぐる旅》 36.3×25.7cm 6年生 Kさん
《自然をめぐる旅》 36.3×25.7cm 6年生 Kさん

材料・用具

教師:水彩絵の具、パステル、カラーサインペン、画用紙、厚手の和紙、鳥の子紙、白ボール紙、マスキングテープ、スチレンボードパネル、 刷毛、ローラー、カッターナイフ、カッターマット等

児童:水彩絵の具等

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