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第六十一回 鳥の1年間の旅

この作品は、4年生の子どもが、「絵の具でゆめもよう」(日本文教出版 図画工作3・4下 p.12-13)で表した作品です。いろいろな用具と絵の具を使い、生まれてくる形や色を楽しみながら、絵に表す活動です。


 

 

「ためし、表す楽しさ」

 

まず、子どもたちに、「絵の具と用具でいろいろな表し方を、どんどんためしてみよう。」「自分が使ってみたいと思う用具を、自分の方法でためすことを楽しもう。」「そのもようの紙を使って絵に表そう。」と投げかけました。

形や色、表し方のよさや面白さの感じは、用具によって異なりますが、基底材となる紙の質感によってもまた違ってきます。子どもたちが紙の肌触りも感じながらためし表せるよう、厚手の画用紙の他に、版画和紙やボール紙、つや紙等を用意しました。


 

 

「Kさんのこころみ」

 

Kさんは、まずパレットでじっくりと混色しています。そして厚手の画用紙に筆と刷毛でゆっくりとぬっています。その上から、自分の筆を机の角や自分の指にトントンと当てて、別の色で細かいしぶきを飛ばしました。次に選んだボール紙や版画和紙にも、時間をかけてつくった色をぬっては、上から絵の具を飛ばしていきました。さらにその上に、波段ボールに付けた絵の具を押し当てて線のもようを写していきました。

Kさんは、用具をそれほど使っていないのですが、パレットで自分の色をつくっている時や、それを紙にぬっている時の姿が、それは心地よさそうに私には感じられたのです。

Kさんのこころみは、紙の上に少しずつ重なっていく形や色の感じが変化していくことを、楽しんでいるようでした。

 

次の週は、前時に表した、もようの紙を組み合わせていきます。

Kさんは、細長い波段ボール二つをななめに折り曲げました。それを嬉しそうに大きい画用紙の真ん中において見ると、その周りを次々とL字型に切ったもようの紙で囲んでいきました。何か大切なものを守っているかのようです。私は、Kさんに今どんな感じがしているか尋ねると、「仲の良い2羽の鳥」と教えてくれました。

その後、いろいろなもようの紙に、他の紙を切ったものややぶいたものをはったり、さらにかき加えたりして一気に作品を仕上げていきました。

 

 

「鳥の1年間の旅」

  

 Kさんは作品に「鳥の1年間の旅」というタイトルをつけました。以下は、Kさんが書いた作品へのコメントです。私の想像を越えた、Kさんのたくさんの思いが広がっていることに驚かされました。

 

2羽の鳥の、とっても楽しい1年間の旅です。

今までに2羽が経験したことがえがかれています。

森のアスレチックで遊んだこと。

水遊びをしたこと。

オーロラを見たこと。

どろんこ遊びをしたこと。

湖の魚と遊んだこと。

二人の仲よしの人間の夫婦が見守っています。

 

1年間の「幸せ」の感じをだすために、紙のきれはしでかこんだり、いろいろな形を切ったりしてはりました。

私は絵の具を使っている時、「こういうふうにかくと、どうなるかな。」と考えながらえがきました。

《鳥の1年間の旅》 四つ切 4年生 Kさん
《鳥の1年間の旅》 四つ切 4年生 Kさん

材料・用具

児童:水彩絵の具、接着剤、はさみ

教師:画用紙、版画和紙、波段ボール、つや紙、刷毛、ハブラシ、ビー玉、水性クレヨン等

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