「お花紙をさわりながら」
お花紙は、子どもたちにとって図工以外でも触れることの多い馴染みの材料です。これを液体のりや絵の具と組み合わせて描画材にすることで、子どもたちがこれまでにない感触の変化を楽しみながら、表したいことを見付けてくれると考えました。
図工室の中央の机に、18色のお花紙を並べ、小さな積み木をのせておきます。もうひとつの机には、共用の絵の具を缶に溶いて、筆を入れて配置しておきます。図工室に入ってきた子どもたちは、まずたくさんの色が並んだ材料に「わぁ、きれい」「楽しみ~」と言いながら、材料に関心を寄せています。
私は、板段ボールの上でお花紙を並べたり、そっとやぶいて重ねたりして思い付いたことを、絵の具でかいていくことを提案しました。お花紙の形や色、感触を十分に味わってから貼っていくよう投げかけました。
「Rさんの楽しい考え」
Rさんは、正方形の板段ボールを選びました。濃い紫色のお花紙の端をするするとやぶいて正方形にし、画面の真ん中に置きました。次に青いお花紙を細長くやぶき、正方形の周りを囲むようにしています。そして薄紫色の細長い形を板ダンボールの周囲にもぐるっと並べると、その上から液体のりでポンポンと貼っていきました。
Rさんは少し先が細く尖った薄紫色のお花紙を、濃い紫の上に重ねて、どの向きで置こうか動かしながら考えているようでした。その時に何かを思い付いたのか、青緑色の絵の具を取ってくると、筆先でゆっくりゆっくり慎重に、たくさんの点々をかきおえて、作品を完成させました。
Rさんは、何かとても楽しそうに完成した絵を回して見ています。さらに友だちのところに持って行っき、回して見せています。私にも回して見せてくれました。Rさんは、なぜ回して見るのか、理由を嬉しそうに話してくれました。「みじかいはりだけのとけいだから、1時間たつとこうやってとけいが回る!」
Rさんが絵を回しているのではなく、本当に時計が回転しているかのように私は感じ、嬉しくてなりませんでした。
その他にも、片面が白い板段ボールの余白を生かしながら表していく子、何層にもお花紙と絵の具を繰り返し重ねていく子、お花紙が絵の具でとろとろになり、それを粘土のように練りながら表していく子、様々に活動が展開した楽しい2時間でした。
「とけい」
Rさんは作品に「とけい」というタイトルをつけました。以下はRさんが作品について書いたコメントです。
このとけいは、ふしぎなとけいです。
ながいはりがないからです。
1じかんたつと、とけいがきゅうに回てんします。
材料・用具
教師:京花紙(18色)、共用の絵の具(30色程度)、液体のり(アラビックヤマト:本題材の造形活動では、京花紙の上からスタンプを押すように接着するため、こののりが望ましい。)、板段ボール(基底材:45×45cm、30×60cmから選べるようにした。)、筆
第六十三回< >第六十五回
コメントをお書きください