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第六十六回 みらい

この作品は、3年生の子どもが、「大地の土のおくりもの」の授業で表した作品です。「土を感じて」(日本文教出版教科書3・4年上 p.25‐26)を参考にしています。身近にある大地の土をほんのひとにぎり採取し、自然の土のよさや面白さを感じ取る鑑賞の活動です。


 

 

「土ってどんな色?」

 

大地の土をほんの少し採取し、篩ってみる、ガラスビンに詰めて比べて見る、それを絵の具にしてちょっとかいたりぬったりして見ることを通して、自然の土を味わうことを子どもたちに提案しました。

私が「土はどんな色かな」と問いかけると、「茶色!」「おうど色!」と返ってきます。教科書の鑑賞のページで作家の栗田宏一さんが集めた土を見ました。子どもたちは「これ、本当に土なの」「色をつけたのかな」と信じられない様子です。

まず、子どもたちに身近にある大地の土を採取することを呼びかけました。しかし都内では、土を採取することはそう容易なことではありません。そこで、梅雨に入る頃から夏休みの終わりまでの間に、自然を感じながら、時間をかけて採取してくるよう伝えました。

 

 

「大地の土には、どんなよさや面白さ、不思議さを感じるだろう。」

 

 夏休みが明け、子どもたち全員が土を採取してきてくれました。袋には「〇〇公園の土」「栃木の祖父母の畑」「沖縄のいとこの庭」などと採取地が書かれており、様々な場所の土が集まりました。

 最初に友だちと協力して天日干しをしておいた土をふるいにかけます。Mさんは、近くの公園で採取してきました。1回目は網目の荒い味噌こしで、2回目は茶こしでふるっていきます。Mさんのグループは、とてもスムーズに活動が進んでいきます。Mさんは、友だちがやりやすいように画用紙を押さえたり、段取りについて優しく声を掛けたりしているのです。

 子どもたちは「こんなにさらさらして細かくなるよ。」「けむりが出てきた。」、「もっと細かくしよう。」、「土ってあったかい」「きれいだな」と土を感じています。さらに、パウダー状になった土を指でなぞって線をかいたり、手の平ですくって落としたりしています。日常生活では土に触れる経験の少ない子どもたちは、ふるいにかける行為そのものが新鮮で、嬉々として活動していきました。

 自分の土をガラス瓶に土をつめて、採取地を書いたラベルを貼りました。全員の土を並べて見ると、「みんな色が違う。」「土ってこんなにいろんな色があるんだ。」「きれいな色!どこの土かな。」「広島の土は赤い色をしている。」「北海道の土は真っ黒だよ。」「黄色の土もある!」「同じ公園でも色が違うね。」「どうしてこんなに色がちがうのかな。」などと土の色の多様さに歓声があがりました。

 

 次の週は、この土を絵の具にしてかいたりぬったりして、さらに土のよさや面白さを感じ取っていきます。

 Mさんは、まず自分の土を菊皿に少し取り、のりを一滴ずつゆっくり落としました。のりが土の上をころころと転がり、混ぜると色が変わっていく様子を、顔をぐっと近づけて静かに見つめています。Mさんは小さな和紙に、ぬっていきます。何度か重ねて濃くしたり、かすれさせて薄くしたりしていろいろためしていきます。私が用意していた胡粉の白を筆先でチョンチョンとのせて表したものを、黒板に設けた「大地の土ギャラリー」コーナーに持って行き、「海」と付箋紙に書いて一緒に貼りました。友だちの作品や添えられた言葉にも注目して、じっくりと見ています。

 Mさんは、友だちの土のラベルをていねいに見ながら、色の違う土を比べています。そして、木をかいて「みらい」という言葉を添えました。その後も「土のもよう」「星」など何枚も表しました。

 ギャラリーはあっという間にクラス全員の土の作品でいっぱいになりました。

 

 

「みらい」

  

 何枚もかいたものを大きな台紙に並べて貼りました。Mさんは「みらい」というタイトルを付けました。

いろんなことがおきて、みらいがかわる話。

みらいへそだっていく木、土と雨つぶ、土のもよう、いろいろな絵があります。

これはみんなががんばっていろいろな所からあつめた土です。

土はいろいろな色があって、きれいです。

《みらい》 28×80cm 3年生 Mさん
《みらい》 28×80cm 3年生 Mさん

材料・用具

教師:胡粉、厚手の和紙(小さめに数種類の形に切って置く)、台紙(厚手の和紙)、土を篩にかける用具(味噌こし、茶こし)、画用紙(ふるった土をびんに入れる時のロート)、ガラス瓶、間伐材の 木製スプーン、筆、PVA、菊皿、タオル等

児童:身近な大地の土(ほんのひとにぎり)

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