この作品は、4年生の子どもが、「まぼろしの花」(日本文教出版教科書3・4年下 p.28‐29)の授業で表したものです。想像を広げながら表したいことを見付けて、絵に表す活動です。
「まぼろしって?」
子どもたちに「まぼろし」のイメージを問いかけると、「見たことがない」「この世に存在しているかわからない」「数百年に一度あらわれる」「世にも美しい」「ある人だけが見る世界」「幻覚」「幻想」などの言葉が次々と返ってきました。子どもたちにとっても想像を掻き立てる言葉なのでしょう。
まず、画用紙にチューブから絵の具を直接絞り出し、手指でぬり広げる、またはローラーや刷毛を使って色を重ねるなど、自分の画面をつくることを楽しみながら、一人一人の心の中に見えてくる「まぼろしの花」を表すことを提案しました。
画用紙は水彩絵の具の発色や、吸水性を生かすためにブレダン紙を使用しました。
「Aさんのもって生まれたよさ」
最初、手指に絵の具を付けることに慎重な子どもたちもいましたが、活動を始めるとすぐに、絵の具のひんやりして、つるつる滑っていく感じ、混ざり合っていく色合いの面白さ、思いもよらない色が現れてくることに引き込まれていきました。子どもたちは皆、立ったまま活動していました。
Aさんは、長い紙を縦に置き、上の方に赤やオレンジ色の絵の具をチューブから絞り、指先で伸ばしています。次に青や黄土、黄緑など下の方に向けて色を変えながら、ローラーや刷毛も併せて使い、画面をつくっています。私はAさんが空や大地などの風景をイメージしているのかと想像して見ていました。
Aさんの画面にはまだ花は現れていません。何度も重なっていく色をとても細やかに長い時間をかけて調整しています。
次の週、Aさんは前時に表した画面をじっと見た後、真ん中に、控えめな大きさでピンク色の花をかきました。さらに小さな花を手前にいくつもかいていきます。すると、最初にかいた花がとても大きく感じられました。その後、画用紙の周りを黒で囲むようにしてローラーと筆で表していきます。
最後に月を表すために、何度も色を重ねていくと、月はだんだん厚みを増していきました。銀色の月が生まれ、作品を完成させました。
Aさんとは2年生の時から、一緒に図工の時間を共にしています。Aさんがつくりだす色、色づかいのよさには何度もはっとさせられるものを感じてきました。
この時間もAさんのもって生まれたよさに触れることができ、とても嬉しく思いました。
「月にむかう花」
Aさんは作品に「月にむかう花」というタイトルを付けました。以下はAさんが作品について話してくれたことです。
青い色をぬった時に、海にしようと思いました。
海のぶぶんはなんども色をかぶせたり、ぼかしたりしました。
月の色やまわりの風景に、とくにこだわりました。
月をみている花が「きれいだなね」と話をしています。
どうくつのむこうにその風景が見えるようにあらわしました。
材料・用具
教師:刷毛、ローラー、スポンジ、画用紙(ブレダン紙)(80×36cm)等
児童:水彩絵の具
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