「粉絵の具をこねる感覚」
「心と身体をゆったりとして、思いのままに色をぬったりかいたりして生まれてくる形や色は、一人ひとりの心にさく花ではないでしょうか」と5年生の子どもたちに投げかけました。これまでの絵の具などの経験を生かし、18cm四方の小さなキャンバス4枚に、自分の思いを自分の表し方で絵に表すことを提案しました。
これまでにも経験している粉絵の具を使います。糊を混ぜて粉絵の具をこねる感覚はとても手応えがあります。こねながら体全体が動いていくような感じです。また、糊の分量を加減することで透明感を出したり、顔料による厚みのある絵肌をつくりだしたりと、様々な調整を繰り返すことができます。
「Cさんの手掛ける黒」
最初にCさんは、赤や黄色、オレンジなどを小皿にとり、糊を入れて少しずつ混ぜていきました。糊の分量を微妙な量で調整し、濃淡が生まれてくるのをいいと感じているのでしょう。画面の全体をぬると、今度は下の方に黒を少量ずつ加えてぬり重ねていました。朝焼けか、夕焼けかなと想像して見ていました(①)。
次のキャンバスには、黒や青,白などを重ねていき、ここにもまた濃淡を表しています。上の方が少しずつ明るくなっていて、星空のようなイメージなのでしょうか。画面下は黒がぬり重ねられ、深くなっていくのを私は感じました(②)。
3枚目は赤と白、黒でグラデーションを試みています。黒を使って円錐形の形をかいています。
私は、どのような空間や時間なのだろうと想像を巡らせながら見守りました。Cさんは、時々ふっと手を止めて画面全体を見るのですが、ほとんど画面に顔をぐっと近づけたままかき続けています。声を掛けられないほどCさんはかくことに没頭しています。私はCさんの表している姿や変化していく形や色に惹きつけられてなりませんでした(③)。
最後のキャンバスにCさんは、青を多く使いながら、ぐいぐいと力強い円環をかきました。中心に黒があります。ここでは糊の分量を少なくして、筆跡が見えるほど粉絵の具が厚くぬられています。これまでのグラデーションの表し方とは違うものです。ほっと息をついたかのようにも感じられました (④)。
Cさんの手掛ける黒は、単色で使うのではなく、少しずつ他の色味を重ねて生みだした黒です。その黒には温かみのある美しいCさんの黒なのだと私は感じました。
「月にむかう花」
Cさんは作品に「理想の場所」というタイトルを付けました。以下はCさんが作品について話してくれたことです。
「理想の場所」とは、行ってみたい場所、見てみたい風景です。
夕日の絵はどこかでみたことがあるような風景。
赤と黒は私の好きな色です。
とげのような形は、無意識にするどい形になりました。
こんな場所が自然界にあるようで、でも異世界です。
青い色は静けさと気持ちが落ち着く好きな色です。
円は安心感です。
材料・用具
教師:粉絵の具、PVA、キャンバス(18×18㎝)4枚、筆、刷毛、溶き皿等
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