おさらい
《放課後の学校クラブ》とは、茨城県水戸市の公立小学校にて2011年から取り組まれているアートプロジェクトである。「こんな学校あったらいいな」という妄想を手づくりで実現しながら今年で10周年。1学期に開催した「ミライの教室」が終わったのもつかの間、子どもたちの視線は既に未来へと向かっていた。
新学期に向けて
早く新メンバーを募りたいという子どもたちのはやる気持ちに後押しされて、7月に再び説明会と体験入部を開催することになった。
子どもたちによる張り紙作戦が功を奏してか、あるいは楽しげな空気がじわじわと広がってきたためか、今回も新たに4名の児童が参加してくれた。
筆者は1時間ほど遅れての参加だったのだが、到着するとなんとびっくり。もう学校のテーマが決まりつつある。次回は秋にやりたいねということで、「月」がメインテーマになったようだ。
子どもたちによる説明会もおてのもの。誰が指示するでもなく、おなじみの「夢の学校くじびき」が始まった。
前回、同じ言葉がたくさん出てきてしまった反省を踏まえ、「学校にあるもの」は予め全員で挙げておく方法に転換。
イス、つくえ、教卓、チョーク、教科書、のぼりぼう、扇風機、体育館……小さなものから大きなものまで。これらをおとな部員が紙に写して箱に入れていく。あとはそれぞれの「夢」を書いて準備完了。
今回も「がっこうですしや」「ほけんしつポリス」「こどもとあそぶきょうかしょ」「うたうくつばこ」など、妄想の膨らむフレーズが並ぶ。新メンバーも一緒に、それぞれのやってみたいものを選び、試しに企画書を書いてみる。
自粛の夏休み
説明会に参加した1年生の新メンバーは「かぎがたのペット」というタイトルからイメージを広げていく。企画書には大きなかぎの形をした動物が描かれており、みどころはずばり「かわいい」ところ。
前回から引き続き参加の2年生部員は「きょうたくいぬごや」という言葉から発想。果たしてどのような「学校」がつくられるのだろうか。
次の活動日は夏休み直前。テーマも「月と夢の世界」に決まり、準備も順調。と、思っていた矢先、再び新型コロナウイルスの感染が急拡大。これまで以上に心配な状況で、子どもたちの通ういつもの学校もオンラインに移行していった。
「コミュニティルーム」とはいえ、学校の中で活動を行っている以上、《放課後の学校クラブ》も足並みを揃えて小休止。
せっかくの夏休みと重なってしまい残念ではあるが、時折オンラインでも活動しながら進捗状況を確認していく。「せんぷうきのせんせい」の準備を進める部員は、お家にあるサーキュレーターを使ってさっそく試作に挑戦。図らずも、それぞれの企画の熟成期間となった。
2学期のスタート
新学期が始まってもまだ学校はオンラインのまま。当初は中秋の名月の頃に開催する予定だった「月と夢の世界」もやむなく延期した。その後、緊急事態宣言も解除され、少しずつ感染状況も落ち着き始めてきたので、10月から本格的に活動再開。
2か月間にわたるブランクがあったため、もう忘却の彼方にいるのでは、という不安もどこ吹く風。むしろ、プランが熟成され、研ぎ澄まされているようにも思われた。念のためにテーマについて確認してみると、引き続き「月と夢の世界」のまま進めていくことに。12月に入るとクリスマスだから、11月にはやりたいねということで意見が一致。
月と夢から広がるイメージ
「ミライの教室」でも大活躍だった4年生の部員も、自身2回目の「学校」に向けてやる気十分。「月」というテーマから「かぐやひめをたすけろ!」という授業を考えた。
「書きなおしたい」ということで改められた企画書には「あくのぐんだんにとらわれてしまったかぐやひめをたすけるゲーム。牛にゅうパックで作ったじゅうであくのぐんだんをたおせ!」とある。
他の部員に呼びかけて各種銘柄の牛乳パックも大量にゲット。カッターナイフで切り出して続々と「じゅう」を量産していた。
一方で、6年生のベテラン部員は「かぐや姫を月にかえせ!」と題して、おもちゃをつくる授業を提案。ストローと紙コップを使って動かす仕組みを検討していた。素敵な看板もつくって準備万端。
初参加の部員も試行錯誤。「くもの上でおもちつき」では、綿を雲に見立てて月のウサギをつくっていた。この他にも「わくせいの授業」や「星しゃてき」など、「月と夢の世界」というテーマから様々なプログラムが生まれていった。もちろん、いつものごとくテーマに捉われない自由な内容も。
一人ひとりのやりたいことを見守っていった結果、最終的な授業数は10科目以上になっていた。改めて会場配置図について話し合う部員たち。久しぶりの大所帯での活動で賑やかな学校になりそうだ。
活動の様子(写真はクリックすると拡大できます)。
放課後の学校クラブ「月と夢の世界」
日時 2021年11月21日(日)14:00~16:00
場所 水戸市立浜田小学校コミュニティルーム
※どなたでもご入学いただけます。ご参加を希望される場合は、予め市川までご連絡いただければ幸いです。
メールアドレス:ichikawa.hiroya@gunma-u.ac.jp
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