「芸術のお花と友達学校」準備の様子はコチラから
臨時の活動日
ここ数年、《放課後の学校クラブ》は月に1回程度のペースで活動を行っている。これは、よくも悪くもおとな部員(特に筆者)のスケジュールに合わせた大人の事情によるものなのだが、必ずしもこの日程だけで準備がぴったり完了するわけではない。時には家庭に持ち帰って続きをするなど、それぞれのペースに合わせてやりくりしてきた。
とは言え、本番直前になると追加の活動日を設けることもある。今回も、「本番までに間に合わなさそうなので、準備をしたい」という希望がある場合は活動日を設けることを提案したところ、数名の部員から手が挙がった。と言うわけで、発表の1週間前にも臨時のクラブ活動を行うことに決まった。
この日は「お花教室」改め「たのしいわくわく学校たんけん」チームから1名、「アザラシ池」を担当する2年生部員1名、そしてまだ内容が定まっていない1年生部員1名の計3名でのこぢんまりとした活動となった。準備を進める、という目標が明確であるため、真剣に製作に取り組んでいた。
「たのしいわくわく学校たんけん」では新入生の参加を想定して校内に隠したキャラクターを探す活動に向けてダンボールで生徒役をつくっていく。「アザラシ池」では、池のまわりに壁をたて、アザラシが池から飛び出さないように工夫していた。1年生部員は、ビーズやスパンコールなどを使って何やらきれいなものをつくっている。すると、「アザラシ池」の部員も加わって工作タイム。「せっかくだから当日来た人たちにも体験してもらったら」と声を掛け、制限時間内にビーズを糸に通すプログラムが誕生した。
この日は、以前に金ケ崎芸術大学校で「イタズラ学校」を企画した高校生もサポートで参加(「イタズラ学校」の様子はコチラから)。当日の生徒役を想定して、リハーサルにも協力してもらう。行き当たりばったり感は否めないが、少しずつ形になってきたようだ。
▲左から アザラシ池の準備・高校生と一緒にリハーサル・ビーズ糸通し大会(仮)リハーサル・何かしらのキャラクターその1
教室づくりと授業準備
こうして年間計画からは約1か月遅れとなったものの、無事に「芸術のお花と友達学校」の当日を迎えた。部員は午前中から集まり会場設営などを進めていく。6年生部員を中心に、机を十字に並べて教室を区切り、それぞれのテリトリーを決めていく。なかなか面白そうな配置である。
今回は授業の内容が多いため、リハーサルも念入りに。特に、6年生部員は怒涛の時間割りである。1時間目は4年生の理科、5年生の国語、6年生の図工。2時間目は4年生が図工、5年生が理科、6年生が国語。3時間目は4年生が音楽、5年生が図工、6年生が体育。これらの偏った教科から構成されたカリキュラムに「もうひとつの学校」の片鱗が垣間見える。授業内容も予め板書しておくなど用意周到。
一方で、「たのしいわくわく学校たんけん」チームは廊下に出て何かしらのキャラクターを隠していく。小学生の間で流行っている「スプランキー」というコンテンツをもとにしているらしい。「誰かの作品を使っても大丈夫?」と聞いてみるが、「オリジナルの要素を加えているから大丈夫」らしい。子どもたちが生み出すイメージの源にはいろいろと考えることも多い。
説明会も同時並行
今回は新年度最初の発表会ということで、説明会も同時開催したところ、新入生が親子で2組ご参加いただいた。おおよそ準備にも目途がついてきたので、開校予定時刻の30分前から別室にて説明会スタート。本来であれば、子どもたち自身の言葉で説明する方が望ましいのだが、今回は本番直前ということでおとな部員が代行。
2011年に始まったアートプロジェクトであることや、子どもたちの自主性に委ねて活動を行っていること、特に参加費などは徴収していないが活動終了後に子どもたち同士でお菓子交換があることや、送り迎えを除いて保護者の参加は任意であることなど、基本的なことをお伝えしていく。
いくつかご質問やご相談もいただき充実した対話を進めていると、おもむろに子どもたちがやってきて「いつまでやっているの」と急かしてくる。「こんな感じで自由に活動しています」と説明しつつ、準備の具合を尋ねる。だいたい整ってきたようなので、説明会を切り上げて会場へ。いつの間にか机の配置もがらっと変わっていた。先ほどの配置の方がよかったようにも思いつつ、ここは子どもたちに委ねてみる。
詰め込み式でもゆっくり開校
前回は始まる前から長い行列ができていたが、今回はひっそりモード。たくさんの来場者を想定して多くのプログラムを用意していたのだが、若干の肩透かし。とは言え、説明会から参加していた1年生も一緒に「芸術のお花と友達学校」が始まった。
当初の計画では、6年生部員による授業は4年生から6年生まで学年ごとに内容を変えていたものの、臨機応変に学年の壁を取り払って実施。理科の授業では、水や洗剤などを駆使して色のついたシャボン玉を水に浮かべたり、砂や石などを使ってろ過をしたり、いろいろな実験に取り組んでいた。まだ「理科」を習っていない1年生もゲーム感覚で授業に参加していた。
同じく6年生部員による国語の授業では、10年後の自分へ手紙を書く時間もあった。おそらく、学校でも行われる機会の多い内容なのだろうと想像する。小学生にとって、10年後というと途方もなく遠い未来である。黒板には「2035年にポストを開ける予定‼」と書かれていた。果たしてそれまで《放課後の学校クラブ》が続いているかどうか。おとな部員への挑戦状のようでもある。
同じ時間に開かれていた「図工教室」では、将来の夢などを桜の花びらにかいて桜の木に咲かせていく。思えば、今回の「芸術のお花と友達学校」では、「お花」と名前がついているものの、全体的にお花要素が少ない。そのような中にあって、当初の計画をしっかりと引き継いでいるところに、6年生部員が屋台骨を支えている感がある。
結んで飛ばして探して倒して
一方、低学年部員による「授業」では、テーマに縛られず、その時々の思いつきが直接的に形になっていく。1年生部員による「ビーズ糸通し大会(仮)」では、ビーズやスパンコールをテグスのような細い糸に時間内にどれだけ通すことができるかを競い合う。まさに、いつもの活動をそのまま展開したような「授業」である。最後にテグスを結ぼうとする時にビーズをぶちまけてしまい、みんなで拾い集める場面も含めて再現度が高い。
2年生部員による「アザラシ池」では、本人が「パチンコ」と呼ぶ道具にアザラシを装着して発射する。トイレットペーパーの芯が軟らかく、うまく輪ゴムをかませるのが難しいが、部員自ら丁寧に手ほどき。着地した場所により点数が決まる。低学年同士で感覚が近いのか、何度も挑戦する「生徒」も。
そして、間もなくして4年生部員を中心に準備を進めてきた「たのしいわくわく学校たんけん」へと出発。教室から廊下へ、休日のちょっと暗めの学校へ繰り出して各所に潜ませたキャラクターを探していく。
参加者は少なかったものの、それぞれの「授業」にじっくりと向き合っている様子が見られた。計8つほどの「授業」を終えた頃からチラホラと新入生も下校し、気付けばいつもの部員だけが残った。ここから先はお楽しみタイムということで、6年生部員が準備していた「体育」の授業をみんなで体験することに。
まずは、廊下に間隔をあけて色水の入ったペットボトルを並べていく。このペットボトルをくるっと投げて、ピタッと直立したら次に進める、リレー形式のプログラムになっていた(文字で伝わるだろうか……)。部員は保護者も交えて3チームに分かれてスタート。なかなか成功できずに倒れてしまうペットボトルも続出。なかなかに熱血したフィナーレとなった。
もうひとつの学校のかたち
当初予定していた「お絵かき大会」や「ソング(歌)大会」を実現することはできなかったが、詰め込み型の「芸術のお花と友達学校」も何とか閉幕へ。終わりかけには、現在大学4年生の元部員のサプライズ訪問があった。もちろん現部員にとっては初対面だが、筆者にとっても約10年ぶりの再会。かつての《放課後の学校クラブ》のことなどをお話しながら、今も変わらずに展開される「もうひとつの学校」の片鱗を共有する。
思い返せば、当時は今より活動頻度も多く、まちを歩いたり、学校内で1日の様子をリサーチしたり、開催場所を求めて交渉に行ったり、「もうひとつの学校」のあり方をいろいろと模索していた。最近では、「放課後の学校クラブってなんとなくこんな感じ」といった具合に何となく方法が定まりつつあるが、そもそも「もうひとつの学校とは何なのかよくわからない」という謎に立ち返る重要性を改めて認識する。
そのような意味で、今回はいつもの学校で取り組まれる機会の多い「授業」をベースにしたものが多かった。これは、ややもすると「もうひとつの学校」が「いつもの学校」化していくことと裏腹の関係にある。それでもなおアートプロジェクトとしての矜持を保つために、おとな部員はどのように振舞うべきなのだろうか。ここら辺で、今一度子どもたちにとって当たり前に存在する「学校」について問い直してみてもいいのかもしれない。
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