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第六十二回 放課後の学校クラブ 第26回 修学旅行復命書2025

 2023年の夏に「放課後の学校クラブ」の6年生部員5名が「金ケ崎芸術大学校」へと赴いてから早2年。昨年は6年生部員が在籍していなかったため実施を見送った修学旅行プロジェクトを、2年ぶりに開催することになった。(前回の様子はコチラから)

 今回は、8月9日から11日にかけて6年生部員2名が参加した。前回は水戸からの道中も同行したが、今回はおとな部員に引率をお任せして、筆者は現地で出迎えることに。ここでは、金ケ崎での少し不思議な3日間を時系列に沿って記し、出張報告に代える。

 

 

8月9日

 

15時15分。朝早くに水戸駅に集合した部員は、常磐線の特急ひたちと東北本線を乗り継いで、少し遅れて無事に到着。今年3月に無人駅となった金ケ崎駅の改札でお出迎え。ここから徒歩で大学校へと向かう。ちょうど猛暑も落ち着いたタイミングであったため、過ごしやすい気候だ。

 

15時40分。大学校に到着。ここではワカツキモケイの若月さんがお出迎え。今年の6月には水戸で「放課後の学校クラブ」の活動にも参加していたため、2か月ぶりの再会。その後は、長旅の疲れを癒すためにしばし休憩。

 

16時15分。地元の小学4年生の男子3名と合流。2年前の修学旅行は参加者が5名と大所帯だったため、「放課後の学校クラブ」の部員のみでの宿泊だったが、今回は2名での参加ということで、地元の子どもたちの「おとまりの時間」も同時に受け入れることにした。「無理して交流する必要はないよ」と伝えていたものの、むしろ地元の子どもたちの方が緊張していたようだ。まずはそれぞれ自己紹介から。

 

みんなで草むしり大会(初日)
みんなで草むしり大会(初日)

17時。大学校ではおなじみの草むしり大会。今年は夏の酷暑と少雨の影響で、植物の生長もまばらであったが、水戸からの子どもたちと地元の子どもたちが協力しながら雑草を抜いていく。初めて訪れた土地でいきなり草をむしり出すのも大学校らしい風景。そしてもちろん、草むしり大会の参加者には100円分のだがし引換券を贈呈。各々にだがしを選びながら夕食まで一休み。 

 

18時。夕食は大学校から徒歩2分の場所にある和洋食道Ecruへ。修学旅行のための特別メニューということで、庭先でバーベキューと流しそうめんをご用意いただいた。一緒に肉を焼き、竹を割ってつくった本格的なレールで流しそうめんを楽しんでいると、いつの間にか打ち解けていく5人組。Ecruのお父さんに「いばらぎ」と「いばらき」の違いについて話しつつ、たくさんお世話になりながら、縁側に座っての豪華な夕食となった。最後はスイカを頬張って夏を満喫。

和洋食道Ecruへ
和洋食道Ecruへ
庭先で流しそうめん
庭先で流しそうめん
流しそうめんに挑戦中
流しそうめんに挑戦中

 

21時。自由な時間。男子小学生はワカツキモケイのプラモデルに夢中。修学旅行生は折り紙を使って駄菓子屋を彩っていた。

 

23時30分。就寝。気温も下がり、寝心地のよい夜だった。

 

 

8月10日

 

朝のお散歩
朝のお散歩

7時30分。起床。布団のたたみ方などを教える。

 

8時。朝のお散歩に出発。前回の修学旅行の際にはオープンしていなかったコンビニエンスストアで、お散歩ついでに朝食も調達。ひとまず一人当たりの予算は400円ということで、この金額に収まるようにお買い物。

 

9時30分。10時からワカツキモケイの工作教室も始まるため、片付けをしながら参加者を出迎えるための準備を進めていく。

書道で新しいフォントをつくろう
書道で新しいフォントをつくろう

10時。「小学生ウィーク2025」が開幕し、ワカツキモケイの工作教室スタート。「おとまりの時間」の4年生1名に加えて、2年生から6年生まで計6名が参加し、会場は大賑わい。そうこうしているうちに、折り紙同好会の及川さんもご来場。この日は1辺75cmの大きな折り紙に挑戦する特別版。こちらも「おとまりの時間」の4年生2名がひと足お先に折りはじめ。さらに、松濤書道研究所の佐竹さんも集合し、「書道で新しいフォントをつくろう」もスタート。水戸の子どもたちは真剣に書道に取り組んでいた。模型も折り紙も書道も、毎月恒例の「図工の時間」でおなじみの活動。この日は夏休みならではの拡張版の開校日となった。しばしそれぞれの活動を見守る。

 

11時。大きな折り紙に挑戦するために午前の部の参加者が集合。ワカツキモケイの工作教室では、粘土でジオラマをつくったり、ゴリラのフィギュアをつくったり、家のあちこちでそれぞれの興味の赴くままに活動する様子が見られた。

 

 

11時20分。修学旅行の2人組は、お昼ご飯の調達も兼ねておとな部員と一緒に近所の総菜屋さんまでお散歩へ。

 

草むしり大会(8月10日)
草むしり大会(8月10日)

11時50分。おとまりの時間に参加していた4年生が「草むしりしてきていいですか」ということで自主的に庭先へ。すっかり草のむしり方も板についてきて頼もしい。頑張りを認めて再びだがし引換券を贈呈。

12時50分。「おとまりの時間」の4年生3人組はここでいったん解散。最後は玄関先で5人揃って記念撮影。昨日、初めて顔を合わせた時の微妙な距離感とは打って変わって、名残惜しそうな様子が印象的だった。6年生女子と4年生男子の組み合わせということで少し心配していたが、ほどよいコミュニティが形成されたようで一安心。

 

書道で新しいフォントをつくろう(午後の部)
書道で新しいフォントをつくろう(午後の部)

13時。大きな折り紙の午後の部の参加者が集合。ワカツキモケイの工作教室も少しずつ完成に近づいてきた模様。ゴリラのミニチュアをつくっていた小学2年生の男の子も、みんなの協力を得ながら立派な作品が仕上がっていた。「庭に出てゴリラがいそうな場所に置いてみようか」と声を掛け、緑を背景に撮影してみる。すると、見慣れたお庭が少し違って見えてきた。

 

14時。修学旅行生はお昼休憩をはさんで午後も引き続き松濤さんと一緒に書道に取り組む。「恋」や「毒」など思い思いの文字をしたためていた。

 

 

14時30分。工作、折り紙、書道もひと段落がついてきた頃、版画家の城山さんもご到着。この後、15時から毎年恒例の「版画でポスターをつくろう」が始まる。秋に開催する「城内農民芸術祭」に向けた広報物のメインビジュアルをつくるワークショップである。金ケ崎芸術大学校の今年度の全体テーマは「Everyone Is an Artist」。グラフィックデザイナーの石井さんと検討を進めた結果、農民芸術祭のポスターについても、文字をベースにデザインを進める方向で定まった。予め文字組をした18文字を分割し、1文字ずつ分担して版をつくり、1枚にまとめて版画を刷るという複雑な段取り。予め、農民芸術祭の出展アーティストにも協力を依頼し、版をつくって送っていただいた。

城山さんから版画の説明
城山さんから版画の説明

15時。「版画でポスターをつくろう」スタート。まずは、修学旅行の2名が参加。ポスターのコンセプトを簡単に説明した後、「EVERYONE is an ARTIST」の中から担当する文字を選ぶ。Mさんは「O」、Yさんは「Y」をそれぞれ手に取った。さらに、仙台からサポートスタッフとして参加の大学生は「S」、そして山梨から帰省中の大学生は「A」を担当。今回は、この文字をベースに紙版画や実物版画の要領でいろいろな素材を貼り付けながら版をつくる。城山さんに刷り上がりのイメージをデモンストレーションしていただきながら、イメージを膨らませていく。「放課後の学校クラブ」の活動ではおなじみのスパンコールも、ここでは版をつくるための材料に。限られた平面上に思い思いの形が生み出されていった。

版をつくる
版をつくる

16時。前日とは別のメンバーとの「おとまりの時間」が始まる。「小学生ウィーク」皆勤賞となる6年生の男子児童、昨年度から引き続きお友達同士で参加した4年生の女子児童2人、今回が初参加となる2年生と4年生の兄弟の5名が集結。水戸からの修学旅行生を含むと計7名のにぎやかな時間となった。まずは自己紹介をした後、この日のミッションでもある版画をつくり始める。

文字の版を並べてみる
文字の版を並べてみる

17時。おおよそ版も仕上がってきたため、ひとまず文字を並べてみる。それぞれの表現が際立ってなかなかに面白い。ここからは夕食の時間までしばし自由な時間。

 

18時。夕食。「おとまりの時間」の参加者はお弁当持参。修学旅行生の二人は、2泊目ということで、ゆっくりお風呂に浸かるため、夕食も兼ねて近所の温泉へ。2年前の修学旅行では、女子と男子の間で温泉に行った行かないを巡ってちょっとした衝突があったことも思い出しつつ。

 

花火の時間
花火の時間

21時。温泉から帰宅。向かいの公園でみんなで花火を楽しんだ。夏の夜らしい風景。少し雨が降ってきた。 

23時。みんなで布団を大移動しながら就寝準備。

 

24時。そろそろ眠りについたかと思ったら、何やら怖い話が聞こえてくる。輪をかけて怖い話をお見舞いしつつ、就寝を促す。

 

 

8月11日

 

「おとまりの時間」の朝食(8月11日)
「おとまりの時間」の朝食(8月11日)

7時30分。起床。布団をたたんで移動して環境を整える。

 

8時。先日もお世話になった和洋食道Ecruさんより、朝食のお届け。普段はランチ時間からの営業であるためモーニングは行っていないが、「おとまりの時間」限定の特別版。ゴーヤのてんぷらや冷製コーンスープなど、夏にぴったりのメニュー。みんなで食卓を囲んでおいしくいただいた。さらに、食後には保護者の方から差し入れのブドウもいただいた。

草むしり大会3回戦(8月11日)
草むしり大会3回戦(8月11日)

9時。お腹が満たされたら、朝の運動も兼ねて何度目かの草むしり大会。お世話になった場所をきれいにするため、みんなで協力しながら草を抜いていく。この数日間、子どもたちの活躍もあり、お庭もだいぶすっきりしてきた。そして終わったらもちろんだがし引換券。

10時。前日に引き続きワカツキモケイの工作教室が始まる。時間になると5名の参加者が訪れ、家の中がさらなる活気に満ち溢れてきた。「おとまりの時間」に参加していた6年生の男子児童もプラモデルで参戦。これと並行して、「放課後の学校クラブ」6年生部員による「もうひとつの学校をつくろう」と題したワークショップも始まった。水戸からの修学旅行の大きな目的の一つとして、いつもと違う環境で「放課後の学校クラブ」の活動を行うことが挙げられる。前回も同様の企画を立てていたのだが、猛暑の影響もありグダグダ状態で十分な活動ができなかった。その時の反省も踏まえて、今回は「おとまりの時間」の参加者と一緒に活動できるようにスケジュールを組んでおいた。とは言え、具体的な活動内容については行き当たりばったり。

 

「もうひとつの学校をつくろう」のくじびき準備
「もうひとつの学校をつくろう」のくじびき準備

10時10分。「放課後の学校クラブと言えばこれでしょ」ということで、おなじみの「夢の学校くじびき」の方法を応用して、「妖怪」と「学校」を組み合わせた「もうひとつの学校」を考えていくことになった。即席でつくったボックスに、学校にあるものと妖怪に関する言葉を入れていく。「もしかすると、茨城の学校と岩手の学校には違いがあるかも」などと話をしながら紙に書いていた。例えば、修学旅行生の子どもたちが通う小学校には敷地内にかえるの置き物がたくさんあったり、岩手の小学校では朝学習や朝マラソンがあったり、ところ変われば違いも見えてくる。

 

10時20分。くじびきの準備がおおよそ終わったら、学校にあるものと妖怪とを組み合わせて言葉を紡いでいく。かえるの置き物は恐怖というキーワードと組み合わせて「きょうふのかえる」あるいは「きょうふの置き物」、朝学習と口裂け女を組み合わせると「朝の口さけ学習」といった具合に興味深いフレーズが続々と。

「もうひとつの学校をつくろう」の板書の様子
「もうひとつの学校をつくろう」の板書の様子
「もうひとつの学校」の検討中
「もうひとつの学校」の検討中

「もうひとつの学校をつくろう」活動風景
「もうひとつの学校をつくろう」活動風景

10時30分。ホワイトボードに書かれたアイディアを選んで自由に発想を膨らませていく。例えば、あずき洗いととけいを組み合わせた「あずきどけい」は小学4年生のコンビで製作。2年生と4年生の兄弟はいったんもめんとパソコンを組み合わせた「いったんパソコン」。手に赤い絵の具をつけてあやしげな手形をつけていた。いつものコミュニティルームとは一味違った環境ではあるが、「放課後の学校クラブ」らしいものが生み出されていた。

「あずきどけい」製作中
「あずきどけい」製作中
「いったんパソコン」製作中1
「いったんパソコン」製作中1
「いったんパソコン」製作中2
「いったんパソコン」製作中2

11時40分。大学生がつくっていた「ざしきわらしの人体もけい」も子どもたちの協力のもとに無事に完成。「もうひとつの学校をつくろう」のプログラムもおおよそ完了した。そろそろ「おとまりの時間」も解散ということで、絵日記をしたためてもらう。それぞれの記憶の中にはどのような思い出が残っていくのだろうか。

 

金ケ崎駅からお見送り
金ケ崎駅からお見送り

12時10分。おとまりの時間解散。

 

12時30分。修学旅行最後の昼食は、期間中に何度もお世話になった和洋食道Ecruへ。初日の夕食でお世話になったお父さんにご挨拶もしたいらしい。

 

14時。昼食を終えて、帰りの準備など。忘れ物がないように。

 

15時30分。3日間お世話になった金ケ崎芸術大学校を出発して、金ケ崎駅へ徒歩で移動。

 

16時01分。金ケ崎駅にて東北本線(一ノ関行)に乗車。この日もまだ活動は残っているため、筆者の引率はここまで。道中の無事を祈りつつ、ホームで電車を見送った。この後、新幹線と常磐線の特急を乗り継いで水戸に戻る。

21時30分。無事に水戸駅に到着したようだ。一安心。

 

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