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第十七回 やみに包まれた明り

やみに包まれた明り
やみに包まれた明り

 この作品は、4年生のTさんが「光のさしこむ絵」(日本文教出版 図画工作3・4下 p.32-33)で表しました。光を通す材料を組み合わせて思い付いたことを絵に表すものです。

 

 

 私は、授業の「めあて」を「問い」の形にして子どもたちに投げかけることを試みています。子どもが自分の見方や感じ方を広げて学びを深めていく手立ての一つになると考えるからです。

「光のさしこむ絵」では、『光を通す材料の形や色には、どんな「いいな」「面白いな」「表したいな」があるだろう』という問いを投げかけました。

 


 

 

 Tさんの問い

 

 Tさんは、最初に黄色いお花紙を画面の真ん中に置きました。

 

 その横に黒いお花紙を置いた時、「黄色がもっと明るく感じる!」と言い、さらに黒を数枚取り、ガラス窓のところに持って行って、光に透かしています。目を近づけたり、遠ざけたりして見ています。目を近づけて黒いお花紙からかすかに透けて見える光は「宝石みたいだ」とつぶやきました。そこに同じ黒を2枚、3枚と重ねて「たくさん重ねると影だ」と光の感じの違いを確かめています。

 

 その後も、繰り返し光とお花紙の見え方や感じ方を探し続けたTさんは、お花紙の上から刷毛で水糊をしみこませて貼っていきます。

 ここでも少しずらしたり、向きを変えて重ねたりして、見える黒色の感じを考えています。

 3枚の異なる色を重ねてそっとやぶき、ずらして一番下の色が見えるようにしました。

 

 私は、ここにどんな感じをもっているのか尋ねると「夜中の空に流れる雲に月の光がさしこんでいる感じ」と教えてくれました。

 Tさんはお花紙の形や色、重ね方、組み合わせ方を何度も置き変えて、「月がより明るく感じられるには、どうしたらいいだろう」と問い続けていたのでした。

 

 

「やみに包まれた明り」 

 

 「やみに包まれた明り」というタイトルを付けたTさんの作品を、私は放課後の図工室でじっくり見ていると、気付いたことがありました。

 左下の黒いお花紙の上に、かすかに黄色いお花紙が残っていたのです。

 Tさんが、気に入らなくてはがしたのかと思いました。

 しかしそうではないことが、作品に添えてくれたコメントから分かりました。

 Tさんの表した「やみ」の中には、たくさんの明りがあったのでした。

 

左下は山頂から見える、かすかに光っている町明かり。小さくちぎって黄色をはりました。

 

真ん中の黄色は月です。

 

月が明るく見えるようにするために、まわりのやみをどう表すか考えました。

 

右側の青と紫は少しずつ明け方に近づいて、やみの空の色が変わってくるようすです。

 

 左上の細長い形は夜の雲で、月の光を透かしてピンクに光っています。

 

 


材料:京花紙(20色)、雲竜紙、液体のり(水で薄めておく)、刷毛、半透明プラスチックだんボール(基底材となる雲竜紙の下に半透明のプラスチックだんボールを置いて、表しながら光と材料の形や色の感じをとらえやすいようにした。) 

 

《やみに包まれた明り》(39×78㎝)4生生 Tさん
《やみに包まれた明り》(39×78㎝)4生生 Tさん

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コメント: 6
  • #1

    阿部 宏行 (水曜日, 03 11月 2021 20:24)

    「問い」にするところに、鈴木先生のすばらしさを感じます、この子どもの言葉からは「知識」は単に知っているという過去ではなく、「問い」という形をとって立ち現れ、「どうしたら」という方法に置き換わって表現されているように思いました。ありがとうございます

  • #2

    伊藤知佳 (日曜日, 07 11月 2021 16:18)

    めあての言葉にいつも迷いますが…めあてを問いにするということを考えたことがありませんでした。気づかせてくださってありがとうございます。子供たちが問いによって自分の中の答えを見つけていく姿が素敵ですね。問いにするには、どこに焦点を当てるのか、がますます大事だなぁと思いました。陽子先生が言葉を注意深く選んでいらっしゃるんだなぁと思いました。

  • #3

    sayaka (月曜日, 08 11月 2021)

    鈴木先生の図工での子供たちはいつも、「どうしたら〇〇できるだろう」と作品・自分自身に問い続けながら活動していることが素敵だなと思っていました。それは先生からの問いからつながっていたんですね。回数を重ねて進める題材の時、めあて・問いがどのように変化していくのか、気になりました。
    また、Tさんの作品と言葉から、自分が思う美しさを大切にしていることが伝わってきました。左下の黒いお花紙のところは、色の深さを確かめて調整しながら、いろいろな影になるようにしていて、いいなと思いました。

  • #4

    図工のみかた編集部 (水曜日, 17 11月 2021 12:58)

    阿部宏行先生
    コメントありがとうございます。

    >「知識」は単に知っているという過去ではなく、「問い」という形をとって立ち現れ、「どうしたら」という方法に置き換わって表現されているように思いました。

    確かに「問い」という形をとることで、「知識」は過去から未来をつくるためのものへとつながっていきますね。
    どのように子どもに伝えるのか、言葉一つひとつについても考えていかないといけないんですね。

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • #5

    図工のみかた編集部 (水曜日, 17 11月 2021 13:02)

    伊藤知佳先生
    コメントありがとうございます。

    私も図工のめあてというと「~しよう」という投げかけのイメージがあったのですが、社会科などでは「発問」という形もありますね(めあてとは少し違うかもしれませんが)。図画工作では「問い」がさらに自分の「問い」を生むというところが大切なんだと感じました。

    仰るようにどこに焦点を当てるのか、指導者の考えがとても重要ですね。
    ぜひ先生のたてられた問いについてもお聞かせください!

  • #6

    図工のみかた編集部 (水曜日, 17 11月 2021 13:06)

    sayaka様

    コメントありがとうございます。
    >回数を重ねて進める題材の時、めあて・問いがどのように変化していくのか、気になりました。
    そうですね、きっと問いも変化していくんでしょうね。図画工作の場合は特に、一つの答えが次の問いを生んでいくようにも感じます。これは題材だけでなく、6年間続けてのことだとも言えそうですね。

    光のさしこむ絵は、まさに光にかざしてみることで見え方が変わるので、子どもたちがどこに心が動かされたのか、見ていて飽きないですよね。

    引き続きよろしくお願いいたします。