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第二十二回 絵の具となかよし

初めての水彩絵の具を使い、自分の色をつくったりかいたりすることを楽しむ題材「水彩絵の具となかよし」です。

 

 

水彩絵の具となかよし

 

 これまで共用の絵の具にたっぷりと触れてきました。

 初めての個人持ちの水彩絵の具を2年生の最後に扱っています。絵に表すというより、色や水を混ぜて自分の色をつくり、思いのままにかいたりぬったりすることを楽しむ活動です。

 

 小さめの紙にいくつもこころみ、子どもたちが「絵の具って楽しいな」、「自分で色をつくるのは心地よいな」と感じることを大切にします。

 

 子どもたちはパレットの穴をのぞいたり、手で持ち「絵描きさん」とポーズをしたりと興味津々です。

 Uさんは、パレットに顔が付きそうになるほど近付けて、混ざり合っていく色を見ています。「あっ!すごいぞ。これ何色だ?」とつぶやきました。図工室のあちらこちらから、「わぁ、きれい」「ねえ、見て!」と歓声が上がっています。

 

 しばらくすると、子どもたちは静まり返り、筆洗バケツにカタカタカタと筆が当たる音が響く中で、自分の色をつくることに夢中になっていきました。


 

 

働きかけ、働きかけられる 

 

 図工室中央に置かれた紙のコーナーに行く途中、IさんはUさんのつくった色を見て、「きれい! どうやってつくったの」と尋ねました。周りの友だちもUさんのパレットをのぞき込み「教えて」と言います。

 Uさんが「緑と白と、青を少しね」と言うと、Iさんは「ぼくもやってみよう」と、教えてもらった色でつくりますが、同じ色にはなりません。Iさんは自分のパレットを持ってUさんのところに行きました。Uさんは、「えー! Iさんのこの色すごくきれいだ」と言うと、Iさんはとても嬉しそうです。Iさんは自分の席に戻り、色味を変えながら、どんどん自分のいいなと感じる色をつくり始めました。

 

 Uさんの隣のKさんは、筆洗バケツの水をずっとのぞいています。

 Kさんは「何だろう?きれいだな」とつぶやきました。それに気付いたUさんはKさんの筆洗バケツの水を見て、「何て美しい!どうやったの?」と聞きました。Kさんに「わからない」と言われ、筆洗バケツの中に、まるでオーロラのように感じられる色水の形をつくることに取り掛かり始めました。

 しばらくしてUさんは、「わかった! 暗い色水をつくって、白をつけた筆をこう、ゆらゆらと動かすとできるんだ」と言います。すると友だちがみんな集まってきて、大興奮です。

 

 

 私は、子どもたちがさまざまなもの(水彩絵の具)、ひと(友だち、先生)、こと(自分や友だちの行為、生まれてくる出来事)に働きかけ、働きかけられるとてもいい時間が図工室に流れていることを嬉しく思いました。

 

 

思ってもみなかった自分の感覚と出会う

 

 Uさんと友だちのたくさんのかかわりにすっかり気をとられていた私は、Uさんが45分間で表したこの作品を見て、はっとさせられました。

 なんと美しい色でしょう。

 

 水を調整しながら、色と色の響き合いを楽しみ、共用の絵の具とは違う、透き通るような色のよさを感じ、筆の穂先を生かした形、筆の動かし方による形の違いを探し、たくさんのこころみが凝縮されていました。

 Uさんは自分の色をつくること、友だちとその時間や空間を共にすることで、思ってもみない自分の感覚と出会っていたのです。

 

 子どもたちが水彩絵の具を用いて自分の思いを探求していけるように、私も共に探索していきたいと思います。


材料・用具

児童:水彩絵の具

教師:画用紙(小さめのサイズに切っておく)

(15×21㎝)2年生 Uさん
(15×21㎝)2年生 Uさん

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コメント: 9
  • #1

    小学校教員 (日曜日, 17 4月 2022 09:36)

    紙と水彩絵の具と筆。

    子供たちにとっては陽子先生の図工の時間が、いろいろなことを試しながら、自分の「いい」を見つけられる素晴らしい時間ですね。
    子供の気づきを大切にしながら、私も素敵な授業をしていけるようにしていきたいと思います。

  • #2

    S.yukari (日曜日, 17 4月 2022 12:33)

    新しい道具や色との新しい出会いを子どもたちは素直に表情や言葉で表現します。その瞬間を共に過ごし、一緒に表現することの楽しさや嬉しさ、難しさもどかしさを見とったり自分自身が重ねて感じたりするとき、何にも変えがたい大切な「とき」として教師のわたしにも心に刻まれていきます。続けていて良かったと思う瞬間でもあります。ようこ先生の言葉やそのときの眼差しが、子どもたちのプロセスを大切にする姿勢と重なります。
    Uさんの色や線の美しさ、気持ちよさが伝わります。目を凝らしてよく見ると、薄い水色が絵の上の方にみえます。それぞれの色の絵の具と水を自分の「いいかんじ」に合わせて描くことの楽しさをこの一枚で教えてくれました。

  • #3

    sayaka (日曜日, 17 4月 2022 18:06)

    個人絵の具を初めて使う子ども達の、喜びや驚き、発見の歓声が、自分が教えている子ども達に重なって、目に浮かびました。しかし振り返ると、私は「道具の使い方を教えないと」「初めの指導をきっちりしないと」という気持ちが強すぎていました。紙の上、パレットの上、筆洗バケツの中、筆の穂先、絵の具を拭ったぞうきんなど、子ども達はいろいろな場所から「いいな」「すきだな」を見つけてきます。その心の動きを制止せず、受け止め、私も子ども達が本当に水彩絵の具となかよしになれる授業にしていきたいです。

  • #4

    図工のみかた編集部 (月曜日, 18 4月 2022 15:01)

    小学校教員様

    コメントありがとうございます。
    >自分の「いい」を見つけられる素晴らしい時間
    誰かの「いい」ではなく、自分にとっての「いい」を見つけていくことが、その子の自己肯定感につながっていくのでしょうか。その積み上げがより深い表現や、ひいてはよい人生につながるように感じます。

    >子供の気づきを大切にしながら、私も素敵な授業をしていけるようにしていきたいと思います。
    そういった思いを持っていらっしゃるだけで、きっと子供たちにとっては豊かな授業になっているのではないかと思います。

    我々も子どもたちと先生方にとってのよりよい図工の授業のお手伝いができるよう頑張っていきたいと思います。

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • #5

    図工のみかた編集部 (月曜日, 18 4月 2022 15:14)

    S.yukariさま

    コメントありがとうございます。

    >何にも変えがたい大切な「とき」として教師のわたしにも心に刻まれていきます。続けていて良かったと思う瞬間でもあります。
    素敵です。先生と子どもの関係は、教える/教えられるというものではなく、子ども達からも多くのものを受け取っておられるんですね。

    >目を凝らしてよく見ると、薄い水色が絵の上の方にみえます。
    水色、気づくと嬉しいですよね。「こんなところも色を使ってたんだ」と思います。そうしてみていくとどんどんいろいろな色が見つかって、いつまでも見ていたくなりますね。
    Uさんだけでなくクラスの子どもたち一人一人を見ていくと、時間がいくらあっても足りなくなりそうですね。

    先生のクラスの子どもたちの様子もまたお聞かせください。

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • #6

    図工のみかた編集部 (月曜日, 18 4月 2022 15:17)

    sayaka さま

    コメントありがとうございます。

    >「道具の使い方を教えないと」「初めの指導をきっちりしないと」という気持ちが強すぎていました。
    鈴木先生も基本的なところは丁寧にご指導されているんじゃないでしょうか。

    >紙の上、パレットの上、筆洗バケツの中、筆の穂先、絵の具を拭ったぞうきんなど、
    子どもたちにとっては紙の上だけでなく、まさに絵の具によってつくられるすべての色の世界が興味の対象なんでしょうね。「絵に表すというより~」と書かれているように、そうした色の世界とのであう楽しさを大切にされているんでしょうね。

    >本当に水彩絵の具となかよしになれる授業
    ぜひぜひご様子お聞かせください!

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • #7

    ふくざき あや (土曜日, 30 4月 2022 11:20)

    絵の具との出会いが
    こんなにもかけがえのない
    ドキドキしてわくわくする時間になるなんて

    保護者や他の先生が認めやすい作品を
    子どもに描かせなければならない
    という考えに陥っていた過去の自分を思い出しながら
    フーッと呼吸が整います

    時間に追われ
    与えられた刺激の中で
    本当は混乱が多い日々を過ごしている 
    子どももいる気がします

    絵の具とのていねいなやりとり
    それによって生まれる友達との関わり
    見守ってくれる先生がいて
    そんな図工室という空間を
    子供と共に
    私も大切に大切にしていきたいです

  • #8

    図工のみかた編集部 (月曜日, 09 5月 2022 09:17)

    ふくざき あや様

    コメントありがとうございます。

    >保護者や他の先生が認めやすい作品
    保護者やほかの先生方はご自身が受けてこられた図工教育の記憶しかないですし
    活動中の様子を見ているわけではないですから
    そこを発信していくというのも大切なお仕事になってきているんでしょうね
    (開かれた教育課程というやつでしょうか…)。

    >時間に追われ
    >与えられた刺激の中で
    >本当は混乱が多い日々を過ごしている 
    >子どももいる気がします

    確かに子どもを取り巻く状況(大人もですけど)は
    例えば私が子どものころ(30年以上前ですが)に比べると大きく変化していますよね。
    それでも、絵の具にふれて、自分で働きかけ働きかけられながら変化を楽しむ時間というのは
    子どもの心に響くものがあるんですね。

    >私も大切に大切にしていきたいです
    ぜひ、ゆたかな図工の時間の様子をお聞かせください!

    引き続きよろしくお願いいたします。

  • #9

    hana (木曜日, 12 5月 2022 17:00)

    はじめて自分の水彩絵の具セットを使う日は、どんなにドキドキしてうれしくなることでしょう。絵の具のチューブから絵の具がパレットに出る瞬間、ハッとするような色との出会いがその後の活動に響いているように感じます。水彩絵の具の多様な色合いを試し、自分のすること、お友達のすることすべてが楽しくて仕方ない様子が目に浮かびます。まさしくともにかなでる図工室での出来事ですね。