この作品は、2年生の子どもが題材「せんのぼうけん」(日本文教出版1・2上 p.48 -49)を参考にして表した作品です。思いのままに線をかくことを楽しみ、その線から思い付いたことを絵本に表す活動です。
「きもちのままに」
細長い紙に、クネクネ、カクカク、ギザギザ、クルクルなど、気持ちのままにかいた線の形から思い付いたことをかき、さらに線をのばして絵に表す様子を演示しました。お話を言葉で書き添えてもいいことや、最後はとじて絵本にすることを伝えておきました。
さっそく子どもたちは「主人公は自分にしよう。」「なんまいもかこう」と、線をかき始めます。サインペンの滑りがいいように、少しつやのある、そして色を塗っても裏に透けない紙を用意しました。「ペンがするするいくね」とかき心地も楽しんでいます。子どもたちは、様々な線の形を試みながら、ペンの色を途中で変えたり、お話を友だちに伝えたりしながら、どんどん線をかいていきました。
「せんの形や色から」
Sさんは、赤いサインペンを選び、ゆっくりと線をかき始めます。くるっと輪をかくとペンを止め、少し考えて、線を二方向に分けました。2本の線を少しずつかき進め、また1本の線になったところで、余白に赤い葉のような形をかいてぬりました(1)。線はとてもゆっくりとなだらかな曲線をつくりだし伸びていきます。すると、線が終わったところで赤い鳥がこちらに向かって飛んできます(3)。葉のように思えた形は、鳥の羽根なのでしょうか(7)。Sさんの線は2本から1本になり、途中で羽根が現れたり消えたりを繰り返しています。Sさんは実にゆっくりと時間をかけてかいていきました。
しかし後半になると、線をかくスピードが急に上がり、大きくうねるように戻っては進み、赤い羽根には筋のようなものが黒でかかれました(8)(9)(10)(11)。
最後に、Sさんは表紙をつくりました。紙の半分まで伸ばした線に沿って、赤い鳥が一緒に飛んでいく絵です。
Sさんの使ったペンはほとんど赤だけです。言葉は添えていませんが、現れたり消えたりするシンプルな形と色に、私は惹きつけられてなりませんでした。Sさんの作品から、言葉にならない心地よさを感じるのです。放課後、私はSさんのかいた線を指でなぞりながら、Sさんがどんなことを考えてかいていたのか、赤い線や羽根、鳥が意味するものは何か、ずっと想像し続けました。
《あかいせんとあかいはね》 (10.5×29.7cm)全11ページ絵本左綴じ 2年生 Sさん
「あかいせんとあかいはね」
作品には「あかいせんとあかいはね」とタイトルがつけられています。
Sさんは作品について以下のように話してくれました。
赤い色をえらんだのは、すこしまえに「リス園」にいったときに、そこで赤いはねのぼきんをやっていて、その赤いはねがいんしょうにのこっていたからです。
赤いせんは、とりがいく道です。赤いはねは、かえりにまよわないようにおとしています。
とりがもどってきたのは、ちゃんとはねがおちているかかくにんするためです(3)。
せんをかくスピードがはやくなったのは、とりがとぶスピードがうんとはやくなったからです(8、9、10)。
ひろいそらでゴールはないから、じゆうにとびつづけられる、きもちよさをえにしました。
材料・用具
教師:A4サイズの紙を縦長に切っておく・カラーサインペン12色(太・細)等
第五十三回< >第五十五回
コメントをお書きください