· 

第七十回 放課後の学校クラブ 第30回 「青春という名のドラマ」上演編

 

 

プロローグ

 

 2026年3月31日。部員が通ういつもの学校では離任式が挙行されていた。お世話になった先生方との別れのシーンはまさに「青春」の1ページ。卒業式を終えた6年生にとっては、小学生としての最後の一日でもある。そんな特別な日にあわせて開催される「青春という名のドラマ」も間もなく上演。

 離任式を終え、午前10時にコミュニティ室に集合した部員たち。午後1時の開幕に向けて、最後の準備に取り掛かる。机やイスを並べて会場を設えたり、看板を仕上げたり、板書をしたり、動きを確認したり、音響チェックをしたり……そのかたわらで、筆者は会場で上映するスライドショーの写真をせっせと選定。この春に小学校を卒業した6年生部員3名の思い出のアルバムである。

 写真を見ているといろいろなことを思い出す。とは言え、今はノスタルジックな気分に浸っている暇もなく。「お昼を食べていいですか?」という声に応じたり、「準備は順調ですか?」と尋ねたり、「12時になったらリハーサルをしよう」と声を掛けたり、「ちょっと暗いんじゃない」と言いつつカーテンを開け閉めしたり、ワークシートのコピーを取りに行ったり、直前までいつものドタバタ劇は続く。

板書中
板書中

 

 

第一幕「そして誰もいなくなった」

 

 そうこうしているうちに時計はもうすぐ1時。いよいよ「青春という名のドラマ」の幕開けである。「Blue Impulse」を担当する3年生部員は午後から参加。まだ場所を決めていなかったため相談したところ、「ろうかで見せたい」とのこと。ブルーシートを敷いた上に力作を展示しつつ、参加者をお出迎え。

 コミュニティ室の中では2年生部員が「たこあげ」の授業を展開中。当初の予定には組み込まれていなかったが、前回の活動にて即席で企画したプログラムである。《放課後の学校クラブ》の現場ではおおよそのできごとは思い立ったが吉日だ。ビニール袋に思い思いに絵をかいて「たこ」をつくっていく。

 ふと気付けば、コミュニティ室にいたはずの部員の姿が少なくなっているような……今回の「もうひとつの学校」では体育館も会場になっていたため、いつの間にかそちらに移動していたようだ。置いてけぼりにされる参加者。「これでいいのだろうか⁉」と困惑していると、いよいよ「たこ」をつくり終えた最後の部員も参加者とともに体育館へと消えていった。

 そして誰もいなくなったコミュニティ室に取り残された筆者と保護者数名。果たして1時半から始まる「ダンス部」の発表会は無事に開幕できるのだろうか。謎解きは第二幕へ。

「Blue Impulse」の準備中
「Blue Impulse」の準備中
たこの製作中
たこの製作中

 

 

第二幕「ダンスの時間」

 

ダンス部の公演風景
ダンス部の公演風景

 午後1時30分の少し前。ダンス部のメンバーがようやくコミュニティ室に戻ってきた。どうやら職員室に行ってきたらしい。なるほど今日は年度末とはいえ平日だ。コミュニティ室といつもの学校を隔てるパーティションも開放されているため、子どもたちは行き来自由。

 しかも、午前中に離任式があったため、先生方も勢ぞろい。「年度末でお忙しいのでは……」というおとな部員の不安も何のその。子ども部員の熱烈な声掛けにより、担任の先生をはじめ、たくさんの先生方にお越しいただいた。

 こうして想定以上のにぎわいでダンス部の公演が始まった。音響を担当する保護者のご協力のもと、音楽を流しながらそれにあわせてダンスを披露していく。同じフロアでひらかれている「開放学級」に通う子どもたちも「何をしているの」と興味津々。「開放の先生に来てもいいか聞いてみてね」と伝えると、さっそく確認して公演を見学。

 ダンス部のメンバーは4年生5名。さらに6年生部員3名もゲスト出演。手をたたいたり、足をならしたり、拍手をしたり、あたたかな観衆に見守られながら、約30分におよぶ舞台となった。スポ根的な厳しさは持ち合わせていないものの、先生と保護者と子どもたちが一緒に空気を紡いでいく現場は「青春という名のドラマ」と言えなくもない。

 

 

第三幕「Blue Impulse」

 

 ダンスの時間が終わったら、次の会場となる体育館へ。とその前に、そこに向かう道中には3年生部員による「Blue Impulse」が駐機中。壁には書き初めでかいたポスターも掲示されている。当初は作品だけ置いて自由に見てもらうつもりだったが、試乗できるように方針転換。加えて、「みんなにわたすものをつくりたい」ということで、色紙を飛行機の形に切り取ったおみやげも準備していた。迷彩に近い色合いにもこだわりが見られる。

 「0さい~10さいまではのっていいです」と張り紙をしたものの、本人から積極的に声を掛けることはしない。前のめりに勧誘をしていたダンス部とは対照的である。とは言え、その存在感に惹かれて廊下に集まった子どもたちは、口々に「これすごい!」「乗れるの⁉」と注目の的。「誰がつくったの?」と尋ねられたため、本人に代わって「3年生の部員がつくったんだよ」と紹介しつつ「せっかくだから乗り心地を確かめてみたら」と一押し。

「俺、10歳‼」とのことで、友だち同士で「乗ってみる」「やめとく」「やっぱり乗ってみようかな」といったやり取りを経てコックピットへ乗り込む。年齢制限の見立てどおり大きさもぴったりだ。ステッキでつくった操縦桿を操作しながら、細かい部分も観察していた。

「Blue Impulse」の整備中
「Blue Impulse」の整備中
「Blue Impulse」からのおみやげ
「Blue Impulse」からのおみやげ

体育館へ向かう部員たち
体育館へ向かう部員たち

 

 

第四幕「放課後の体育館にて」

 

 一方その頃、体育館では6年生部員による「スポーツフェスティバル」を開催中。いつもは他の団体が使用している機会も多く、体育館で《放課後の学校クラブ》の活動を行うこと自体が久しぶりである。壁面に大きく掲げられた「おめでとう」の文字が青春の一幕を彩っている。

 ダンス部の公演に引き続き、先生方にもご参加いただき、子どもも大人も一緒になって競技に挑む。気になる種目はと言えば、以前に廊下で遊んでいた「ペットボトルレース(仮)」の拡大版である。走者はピンポン玉をバウンドさせて紙コップに入れたり、ペットボトルを回転させて立たせたり、ミッションをクリアした上で体育館の反対側の壁との間を往復するリレー形式になっている。純粋な走力だけでははかれない、奥深いスポーツ(!?)だ。

大人も子どもも学年もバラバラな3つのチームに分かれて繰り返されるレース。6年生にとっては、思い出深い先生方との楽しいひと時となったことだろう。こうして先生や児童、保護者といった既存の役割が少しずつ混ざり合い、時に倒錯しながら遊びのような授業のような曖昧な時間が流れ、「もうひとつの学校」の幻影を浮かび上がらせる。

スポーツフェスティバルの様子1
スポーツフェスティバルの様子1
スポーツフェスティバルの様子2
スポーツフェスティバルの様子2

 

 

第五幕「小説家卒業」

 

 そして最後のプログラムはコミュニティ室に戻り、6年生部員による「小説家卒業」のスタート。参加者は「青春市立モッツァレラ学園」に入学し、小説家になるためのテストを受験する。これがなかなかに難問で「青春」をテーマにしたセリフを考えなければいけない。例えば「ディズニー行ってケンカした。何て言う?」といった具合に。果たしてどのようなモードで回答するべきか……。

 中には、前回紹介した「夢の青春くじびき」より「好きな人としゃべってたら笑っちゃった」といったフレーズも取り入れられていた。回答しているとどこか気恥ずかしく、授業の際に手元を隠したがる子どもたちの気持ちに共感する。記入を終えたら、部員自ら赤ペン先生となって丸付け。ちなみに、筆者の答案用紙はかなりおまけしてもらっての99点であった。

「小説家卒業」の回答用紙
「小説家卒業」の回答用紙
「小説家卒業」の採点中
「小説家卒業」の採点中

 ところで、学校名の「モッツアレラ」要素はどこへ……と思っていたら、となりのテーブルでは低学年の子どもたちが黄色い画用紙を切ってチーズを製造中。これはもしや『チーズはどこへ消えた?』のオマージュなのでは、と深読みしたりしなかったり。いずれにせよ、小学校を卒業する部員には変化を恐れずに果敢に挑戦を続けてほしいところである。

チーズを製造中
チーズを製造中

 

 

エピローグ

 

 今回、6年生部員を中心に企画された「青春という名のドラマ」では、これまであまり取り組む機会のなかった発表会形式のプログラムや体育館での活動など、新入部員とともに新たな風を感じることもできた。と同時に、今回の発表会には《放課後の学校クラブ》の初期メンバーが久しぶりに「生徒」として参加していた。2011年に活動を始めた頃から変わったこともあれば変わらないこともある。

 現代美術家の北澤潤さんによる「もうひとつの学校をつくろう」という呼び声に端を発するこのプロジェクト。今まさに現役で学校に通う子ども部員にとって「もうひとつの学校」を想像することは容易な道のりではなかった。それと同様に、青春まっただなかの子どもたちにとって、そもそも青春それ自体を客観視することも難題である。ふとした拍子にここでの経験をふり返った時、それが「青春という名のドラマ」の一幕になっていることを期待しつつ。

 

と言うことで、最後に読者の皆さんへ「青春テスト」の例題を。下線部に入る言葉を答えよ。

 

(1)先生におこられた。どう言い返す?

先生「えんぴつをおとすな‼」

自分「____________________ 」

先生「ごめんなさーい」

 

 無意識的に「先生」の役割をあぶりだしてしまうようなハッとする設問である。果たして、あなたは無事に卒業できるだろうか。

 

 

図工のあるまちそのほかのコンテンツはこちらから

    

第29回<放課後の学校クラブ>第31回